ニシアフ(アフリカンファットテールゲッコー)は温和で扱いやすいヤモリとして知られていますが、扱いやすいことと、不調に気づけることは別です。Yarmouth Veterinary Center(動物病院)のケアシート「YVCipedia: African Fat-Tailed Gecko Care Sheet」は、ニシアフを夜行性の地表性ヤモリと説明しています。飼い主が見ている時間と、ニシアフが動いている時間がずれている、ということです。
この記事では、RSPCA Australia(豪州)の爬虫類一般のケアシート「How can I tell if my reptile is sick?」、Yarmouth Veterinary Centerのケアシート、Reptiles Magazine「Ask A Vet」の獣医師Margaret A. Wissman氏(DVM, DABVP)の回答をもとに、ニシアフの体調をどこで、どの頻度で見て、どこから動物病院に相談するかを整理します。病名の解説はせず、迷う形は爬虫類を診られる動物病院への相談で閉じています。
ニシアフも調子の悪さを隠す:だから「決まった日に決まった所を見る」
RSPCA Australiaによると、爬虫類は病気の証拠を隠すのがとても上手で、多くの場合、隠す体力が残っていないほど弱るまで隠し続け、そこまで来ると状態は急に、速く悪くなります。サインは見つけにくいというより、そもそも無いことも多い、というのが同じ出典の書き方です。
そこで勧められているのが、行動・食欲・糞・体重の4つを決まった手順で定期的に見る習慣です。少なくとも週1回この手順で見ていれば、多くの問題を手に負えなくなる前に拾える、としています。この記事の骨組みはこの4つに、ニシアフ固有の「尾の太さ」を1つ足したものです。
棲み分けを先に書いておきます。脱皮の残りやすい場所はニシアフの脱皮不全、食べない時に見る順番はニシアフの餌、湿度と温度の数字はニシアフの湿度管理とニシアフの温度管理が持っています。この記事は、それらに行く前の「いま何を見て、どこで相談に切り替えるか」を束ねる位置づけです。
毎日・毎週・毎月に見るもの
RSPCA Australiaの4項目と、Yarmouth Veterinary Centerが頻度を決めている世話を表にまとめます。頻度は出典が書いている範囲でそろえています。
| 頻度 | 見るもの | 内容 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 毎日 | 水と糞 | 水を毎日替え、汚れた所をその日のうちに取り除く。そのついでに、糞が出ているか、下痢か、尿が多すぎたり全く無かったりしないかを見る | Yarmouth Veterinary Center(毎日の水替えとスポット清掃)/RSPCA Australia(見る点) |
| 給餌のたび | 食べた量 | 皿で与えるかピンセットで与えて、どれだけ食べたかが分かる形にする | Yarmouth Veterinary Center |
| 少なくとも週1回 | 行動・食欲・糞・体重 | 4つを決まった手順で見直し、「いつもと違う」を比べる基準を作る | RSPCA Australia |
| 週1回か月1回 | 体重 | 測って記録する。見るのは数字そのものより前回との差 | RSPCA Australia |
| 体重を測る日 | 尾の太さ | 尾の付け根から先までの太さを、前回の見た目や写真と比べる | Yarmouth Veterinary Center(尾の役割)/Wissman(受診の判断材料) |
| 年1回 | 健診 | 爬虫類を診られる動物病院で。初回は迎えてすぐ(後述) | Yarmouth Veterinary Center/RSPCA Australia |
「給餌のたび」の行は、Yarmouth Veterinary Centerが給餌のこつとして「皿で与えるか、ピンセットで与えて、食べた量を把握する」と書いているものです。ケージに虫を放す形だと、食べたのか逃げたのか分からず、食欲の変化が記録に残りません。
尾の太さの行だけは、出典が頻度を決めていません。この記事では体重を測る日にそろえて見る、としています。数字にしにくい場所なので、同じ角度で撮った写真を日付つきで残しておくと、前回との差を見やすくなります。
尾の太さと体重:ニシアフに固有の見方
Yarmouth Veterinary Centerによると、ニシアフという名前は太い尾に由来し、尾に蓄えた脂肪は餌の少ない時期のエネルギーの貯えとして働きます。尾の太さは、その個体の貯えの残り具合をおおまかに映す場所です。
Reptiles Magazineの「Ask A Vet」で獣医師のMargaret A. Wissman氏(DVM, DABVP)は、「尾が太くなくなり、前ほど食べなくなり、少し元気がない11歳のニシアフ」について相談を受け、食欲の減少はおそらく何らかの病気のサインだと答えています。11歳はまだ中年にあたるので、老いで片づけられる段階ではない、という見方です。そして、体重減少と元気消失は無視してはいけないサインだとして、爬虫類を診られる獣医で検査を受けるよう勧めています。これは1つの飼育者への回答で、すべてのニシアフに当てはまる基準として書かれたものではありませんが、「尾が細くなる・食べる量が減る・元気がない」の3つがそろった時に、様子見ではなく受診の側に倒す、という順番は参考になります。
同じ回答で、相談者が店で見かけた「スポイトで与えるビタミン剤」について、Wissman氏は、効くかどうか分からないものにお金を使うより獣医に診てもらう方を勧めています。餌の虫にビタミンをまぶしていることが原因だとは考えにくいとした上で、1種類の虫に偏らず、ガットローディングしたいろいろな虫を与えるよう勧めています。
尾だけで判断しない、という注意も要ります。Yarmouth Veterinary Centerはニシアフのよくある健康問題の1つに、脂肪の多い虫の与えすぎによる肥満を挙げ、ワックスワームとスーパーワームは控えめに、としています。どの虫をどのくらい与えるかはニシアフの餌に任せ、この記事では「尾は貯えの指標であって、太ければよいわけではない」とだけ押さえておきます。
体重の見方はRSPCA Australiaの通りです。成長中の個体は少しずつ着実に増え、成体は維持するのが普通で、急に落ちるのも、じわじわ減り続けるのも心配な変化です。目安となる体重の数字はこの記事では挙げません。個体差があるので、同じ個体の前回との差を見る方が確かです。
食欲と糞:普通の変化と、心配な変化
「食べない=病気」ではありません。RSPCA Australiaによると、爬虫類は代謝が遅く、しばらく食べるのをやめることがあっても普通です。例として挙がっているのは、ブルメーション(休眠)に入っている時、産卵の前、脱皮の前です。
心配なのは、はっきりした理由が無いのに食欲の低下が続く場合で、RSPCA Australiaは、食欲に不安があるなら爬虫類を診られる獣医で診てもらうように、としています。「何日食べなければ危険」という独自の線は、この記事では引きません。理由が見当たらない時に何から確かめるかはニシアフの餌の「食べない時に見る順番」が持っています。
糞でRSPCA Australiaが挙げる見る点は、下痢をしていないか、糞が出ているか、尿が多すぎたり全く無かったりしないか、の3つです。毎日の掃除のついでに見られる場所なので、変化に気づきやすい所でもあります。RSPCA Australiaによると、健診では糞を顕微鏡で調べます。
よくある5つのトラブルと、見える様子
Yarmouth Veterinary Centerがニシアフのよくある健康問題として挙げているのは、次の5つです。同じケアシートは、それぞれの原因側を短く添えています。
| トラブル | 出典が添えている原因側 | 近い警告サイン | 先に見直す環境側 |
|---|---|---|---|
| MBD(代謝性骨疾患) | カルシウムやUVBの不足 | 四肢や顎の腫れ、脱力 | ダスティングを続けているか。照明の扱いは出典で考え方が分かれるので、この記事では断定しない |
| 呼吸器感染 | 湿度や温度が合っていない | 呼吸が苦しそう、ゼーゼーという音 | 温度と湿度を実測しているか(温度管理/湿度管理) |
| 寄生虫(内部・外部) | 記載なし | 食欲低下、体重減少、糞の変化 | 健診での糞の検査 |
| 脱皮残り | 特に指と尾の先に残る | 脱皮が異常、または不完全 | 湿った隠れ家があるか、湿度(脱皮不全) |
| 肥満 | 脂肪の多い虫の与えすぎ | 体重が増え続ける | ワックスワーム・スーパーワームの頻度(餌) |
注意が1つあります。Yarmouth Veterinary Centerは、健康問題の一覧と警告サインの一覧を別々に挙げていて、「このサインならこの病気」という対応表にはしていません。「近い警告サイン」の列は、同じケアシートの警告サインのうち意味の近いものをこの記事が並べたもので、見える様子から原因を特定できるという意味ではありません。当てはまるものがあれば、自分で処置しようとせず、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。
UVBについて、Yarmouth Veterinary Centerは、ニシアフは夜行性で明るい照明を要らないとした上で、低レベルのUVBは任意だが健康上の利益があるかもしれない、と書いています。出典とこのサイトの既存記事で前提が違うので、この記事では要否を断定せず、数字も挙げません。
すぐ相談するサイン
Yarmouth Veterinary Centerがニシアフの警告サインとして挙げる5つと、RSPCA Australiaが爬虫類一般で「見たらすぐ爬虫類を診られる獣医へ」としている7つを、重なる所を束ねて並べます。「相談するかどうか」を決めるための線で、診断の代わりにはなりません。迷ったら相談する側に倒してください。
| 見えている状態 | 出典 |
|---|---|
| 元気消失、脱力、姿勢や筋緊張の変化(うずくまる、体を持ち上げない) | Yarmouth Veterinary Center/RSPCA Australia |
| 食欲低下、体重減少 | Yarmouth Veterinary Center |
| 尾が細くなり、食べる量が減り、元気がない(3つが重なる) | Wissman(1件の回答) |
| 呼吸が苦しそう、ゼーゼーという音、呼吸が速い・遅い・努力している、鼻や口の泡 | Yarmouth Veterinary Center/RSPCA Australia |
| 目・耳・鼻・口からの分泌物 | RSPCA Australia |
| 脱皮が異常または不完全、皮膚の赤み・腫れ・その他の変化、残った脱皮皮 | Yarmouth Veterinary Center/RSPCA Australia |
| 四肢や顎の腫れ、体の腫れ | Yarmouth Veterinary Center/RSPCA Australia |
| 一肢以上の跛行(足を引きずる) | RSPCA Australia |
注意
Yarmouth Veterinary Centerは、早い受診が結果を良くする、としています。「様子を見る」と決めた時も、翌日の糞、次の体重測定で悪くなっていないかを確かめる日をつけておいてください。確かめる日の無い「様子見」は、受診を先送りにしているのと同じです。
活動が落ちた時、先に疑うのは環境
「前より動かない」という変化について、RSPCA Australiaは衰弱か低体温のサインかもしれないとした上で、順番を決めています。まずケージの温度が種に合っているかを確かめ、合っていれば爬虫類を診られる獣医へ、です。
ニシアフで注意したいのは、比べる相手です。Yarmouth Veterinary Centerによればニシアフは夜行性で、昼間に隠れ家から出てこないだけでは、動きが落ちたとは言い切れません。「動かない」と感じた時は、いつも動いている時間帯の様子を、いつものその時間と比べます。
温度を確かめるには実測値が要ります。Yarmouth Veterinary Centerは、デジタル温度計と湿度計で測ることと、ヒーターにサーモスタットをつけることを勧めています。測っていなければ「合っているか」の判断ができません。目標の数字と測る位置はニシアフの温度管理とニシアフの湿度管理に任せています。
環境を見直しても変化が続くなら、環境ではなく体の問題として相談してください。「もう少し様子を見る」を延ばし続けないために、見直した日と、次に確かめる日を決めておきます。
初診と年1回の健診、元気なうちの病院探し
Yarmouth Veterinary Centerは、迎えた後できるだけ早く初診を受け、その後は年1回、爬虫類の診療経験のある獣医で健診を受けるよう勧めています。RSPCA Australiaによると、年1回の健診では、獣医が飼い主から話を聞き、外から体を診て、口の中を見て、糞を顕微鏡で検査します。血液検査もできる、とあります。
小さな体でも検査はできます。Wissman氏によると、ヤモリほど小さなトカゲでも、血液検査、X線、細菌と真菌の培養、細胞診、血清検査などの診断ができます。「小さいから診てもらえることが無い」と考えて受診を遅らせる理由はありません。
爬虫類を診られる獣医の探し方として、Wissman氏はARAV(Association of Reptilian and Amphibian Veterinarians、爬虫類・両生類獣医師会)の会員リストから、実際に診療所を構えている獣医を当たることを挙げています。近くにいない場合の案として、大きな獣医診断ラボの無料相談サービスをかかりつけの獣医から使ってもらう方法も書かれています。この名簿は州ごとの一覧を案内する米国の読者向けの情報で、国内でそのまま使えるとは限りませんが、「名簿を先に当たる」「診療所を構えているかを確かめる」という順番は同じです。
Yarmouth Veterinary Centerの用品リストには「動物病院に連れて行くための安全なキャリー」が入っています。病院が決まっていても、運ぶ箱が無ければその日に動けません。相談する時に役に立つのは、体重の記録、尾の写真、温度計と湿度計の実測値、最後に糞が出た日、最後に食べた日です。
まとめ
- 爬虫類は病気を隠す動物です。サインが無いことが多く、出た時には急に悪くなります。ニシアフは夜行性で、昼間に見ているだけでは気づきにくいことも重なります
- 見るのは行動・食欲・糞・体重の4つに、ニシアフ固有の尾の太さを足した5つ。糞は毎日の掃除のついでに、4つの見直しは少なくとも週1回、体重と尾は週1回か月1回測って前回との差を見ます
- 尾は脂肪の貯えです。細くなるのは心配な変化ですが、太ければよいわけでもなく、脂肪の多い虫の与えすぎによる肥満も出典が挙げる健康問題の1つです
- ブルメーション・産卵前・脱皮前に食べないのは普通です。理由の無い低下が続く時、尾が細くなる・食べない・元気がないが重なった時は相談の側です
- 呼吸が苦しそう、鼻や口の泡、分泌物、四肢や顎の腫れ、跛行、残った脱皮皮、姿勢の変化はすぐ相談です
- 動きが落ちたら、先に温度を実測して確かめ、合っていれば受診します
- 迎えてすぐの初診と年1回の健診を受け、病院とキャリーは元気なうちにそろえておきます
診断と処置は、爬虫類を診られる動物病院に任せてください。この記事が扱ったのは、相談するかどうかを決めるために、どこを、どの頻度で見るかまでです。