フトアゴヒゲトカゲ(フトアゴ)は昼行性で姿が見やすいトカゲですが、見やすいことと、不調に気づけることは別です。RSPCA Australia(豪州)の「爬虫類が病気かどうかをどう見分けるか」というケアシートは、冒頭で、病気のサインは見つけにくく、そもそもサインが無いことも多い、と書いています。この記事では、RSPCA Australiaの爬虫類一般とフトアゴのケアシート、RVC(ロイヤル獣医センターの日本語ケアシート)をもとに、フトアゴの体調をどこで、どの頻度で見るかを整理します。病名の解説はせず、迷う形は爬虫類を診られる動物病院への相談で閉じています。
フトアゴは調子の悪さを隠す:だから「決まった日に決まった所を見る」
RSPCA Australiaによると、爬虫類は病気の証拠を隠すのがとても上手で、多くの場合、隠す体力が残っていないほど弱るまで隠し続け、そこまで来ると状態は急に、速く悪くなります。そこで同じ出典が勧めているのが、行動・食欲・糞・体重の4つを決まった手順で定期的に見る習慣です。少なくとも週1回この手順で見ていれば、多くの問題を手に負えなくなる前に拾える、としています。この記事の骨組みはこの4つです。
棲み分けを先に書いておきます。顎や四肢の変化とMBD(クル病、代謝性骨疾患)の予防はフトアゴのクル病(代謝性骨疾患)が、お迎えから3か月までの週1回の体重記録はフトアゴベビーの育て方が持っています。この記事は年齢を問わず、毎日・毎週・毎月に何を見るかを束ねる位置づけです。
毎日・毎週・毎月に見るもの
RSPCA Australiaの4項目と、RVCが頻度を決めている項目を表にまとめます。頻度は、出典が書いている範囲でそろえています。
| 頻度 | 見るもの | 内容 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 毎日 | 糞 | 取り除く。ついでに、下痢か、出ていないか、尿が多すぎるか全く無いかを見る | RVC(毎日の除去)/RSPCA Australia(見る点) |
| 少なくとも週1回 | 行動・食欲・糞・体重 | 4つを決まった手順で見直し、「いつもと違う」を比べる基準を作る | RSPCA Australia |
| 週1回か月1回 | 体重 | 測って記録する。見るのは数字そのものより前回との差 | RSPCA Australia |
| 年1回 | 健診 | 爬虫類を診られる動物病院で。含まれる検査は出典で違う(後述) | RSPCA Australia/RVC |
「毎日」の行の根拠はRVCの「毎日の糞の除去」です。糞を毎日取る習慣があれば、糞の状態と、食べたか、動いているかが毎日目に入ります。RSPCA Australiaの「少なくとも週1回」は、4つを意識的に見直す頻度の下限です。
体重は、RSPCA Australiaによると、成長中の個体は少しずつ着実に増え、成体は維持するのが普通で、急に落ちるのも、じわじわ減り続けるのも心配な変化です。目安となる体重の数字はこの記事では挙げません。個体差があるので、同じ個体の前回との差を見る方が確かです。日付と体重を一行で残しておくと、動物病院で「いつから」「どのくらい」を答えられます。
糞と食欲:普通の変化と、心配な変化
「食べない=病気」ではありません。RSPCA Australiaによると、爬虫類は代謝が遅く、しばらく食べるのをやめることがあっても普通です。例として挙がっているのは、ブルメーション(休眠)に入っている時、産卵の前、脱皮の前です。
心配なのは、はっきりした理由が無いのに食欲の低下が続く場合で、RSPCA Australiaは、食欲に不安があるなら爬虫類を診られる獣医で診てもらうように、としています。RVCはもう少し具体的に、ブルメーション期以外で1〜2週間以上餌を拒むならすぐに動物病院へ、を目安に挙げています。この記事で挙げる日数の目安はこれだけで、「何日食べなければ危険」という独自の線は引きません。何をどのくらい食べるのが普通かは、フトアゴの給餌の回数と量が持っています。
糞でRSPCA Australiaが挙げる見る点は、下痢をしていないか、糞が出ているか、尿が多すぎたり全く無かったりしないか、の3つです。糞が出ない側で、RVCは「いきんでも排便が無い、膨満、引きずるような、または弱った後ろ足、食欲不振」をインパクション(腸閉塞)の症状として挙げ、緩い砂によるインパクションを外科的な緊急事態と書いています。RSPCA Australiaも、砂や細かい砂利を食べないよう注意するように、としています。床材の選び方はフトアゴの床材の選び方で扱っています。
体つきと動きの見方:顎・四肢・体の持ち上げ・震え
出典が挙げている見る場所は、顎と四肢と姿勢です。RVCはMBDの症状として、柔らかい、または腫れた顎、でこぼこしたり湾曲したりした四肢、震え、弱った後ろ足、体を持ち上げるのが困難、を挙げています。RSPCA Australiaが爬虫類一般で「すぐ受診」に挙げるサインにも、一肢以上の跛行(足を引きずる)、体の腫れ、姿勢や筋緊張の変化(うずくまる、以前ほど体を持ち上げて立たない)が入っています。
これらは「見たら受診」の側のサインで、家で様子を見て判断するものではありません。外から見た様子だけで原因を特定する方法は無く、この記事にもそれはできません。何を疑い、予防として環境のどこを見直すかは、フトアゴのクル病(代謝性骨疾患)にまとめています。
脱皮の残りやすい場所:指と尾の先
RSPCA Australiaのフトアゴのケアシートによると、脱皮は複数の破片に分かれてむけ、頻度は成長速度で決まります。注意するように、と書かれているのは残った皮で、特に指と尾の先です。爬虫類一般の「すぐ受診」のサインにも、皮膚の赤み・腫れ・その他の変化と並べて「残った脱皮皮」が入っています。残った皮を剥がしてよいか、湿度をどう扱うかは、フトアゴの脱皮不全が扱っています。
もう一つ、同じケアシートには、足や尾を傷めて失った場合、他のトカゲと違って再生しない、とあります。RVCは、同居が優劣関係やストレス、指や尾の欠損を招くとして単独で飼うことを求めていて、RSPCA Australiaも、一緒に飼うと争って傷つけ合うことがあるとしています。欠損は体調のサインというより、起きたら戻らない変化です。
よくあるトラブルと見分け方
出典が挙げている健康問題を、見える様子と、環境側で先に疑う点にまとめます。どれも「こう見えたら、こう疑う」の段階までで、確定は動物病院の仕事です。当てはまるものがあれば、自分で処置しようとせず、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。
| トラブル | 見える様子 | 環境側で先に疑う点 | 出典 |
|---|---|---|---|
| MBD(代謝性骨疾患) | 柔らかい・腫れた顎、でこぼこや湾曲した四肢、震え、弱った後ろ足、体を持ち上げられない | UVBが弱い・遠い・期限切れ・ガラス越し、バスキング温度、カルシウム | RVC |
| インパクション(腸閉塞) | いきんでも排便が無い、膨満、引きずるような、または弱った後ろ足、食欲不振 | 緩い砂や細かい床材、バスキング温度、餌の大きさ、水分 | RVC/RSPCA Australia |
| 呼吸器感染症 | 開口呼吸、鼻や口からの粘液や泡、体を膨らませる、元気消失 | 温度の低下、じめじめして寒い環境、換気不足 | RVC |
| アデノウイルスやその他の感染症 | 慢性的な成長不良、やせ細り、元気消失、幼体で繰り返す体調不良 | 環境より入手経路(CB個体、新しい個体の検疫、衛生管理) | RVC |
餌の大きさについてRSPCA Australiaは、フトアゴの頭の幅より大きな生き餌は与えないように、としています。アデノウイルス等だけは予防が入手の側にあり、RVCは、信頼できるブリーダーからCB個体(人工繁殖個体)を迎え、新しい個体は検疫(隔離)することを挙げています。
様子を見てよい/すぐ相談する
RSPCA Australiaが爬虫類一般で「見たらすぐ爬虫類を診られる獣医へ」としている7つと、RVCがフトアゴで「こんなときはすぐに動物病院へ」としている5つを、重なる所を束ねて表にします。「相談するかどうか」を決めるための線で、診断の代わりにはなりません。迷ったら相談する側に倒してください。
| 見えている状態 | 目安 | 出典 |
|---|---|---|
| ブルメーション・産卵前・脱皮前に食べる量が減った | 出典は「普通にある」としています。次の測定で体重が保たれているかを確かめる | RSPCA Australia |
| 脱皮が複数の破片に分かれて進んでいる | 出典が書く通常の経過です。指と尾の先に残っていないかを見る | RSPCA Australia |
| 動きが鈍い | まず温度がフトアゴに合っているかを確かめる。合っていれば相談する | RSPCA Australia |
| 理由の無い食欲低下が続く/ブルメーション期以外で1〜2週間以上食べない | 相談する/すぐ相談する | RSPCA Australia/RVC |
| 柔らかい・腫れた・ゴムのような顎、曲がりやすい四肢、震え、跛行、体の腫れ、姿勢の変化 | すぐ相談する | RVC/RSPCA Australia |
| 粘液を伴う開口呼吸、鼻や口の泡、呼吸が速い・遅い・苦しそう、目・耳・鼻・口からの分泌物 | すぐ相談する | RVC/RSPCA Australia |
| いきんでも排便が無い、後ろ足を引きずる・弱っている | すぐ相談する | RVC |
| 皮膚の赤み・腫れ・変化、残った脱皮皮 | すぐ相談する | RSPCA Australia |
| 落ちくぼんだ目、粘つく唾液、著しい元気消失 | すぐ相談する(脱水か重い病気) | RVC |
注意
「様子を見る」には、次に確かめる日がついています。翌日の糞、次の週の見直し、次の体重測定で悪くなっていないかを確かめるところまでが「様子を見る」です。RVCは、食べなくなった、震えがある、顎が腫れているフトアゴはすぐに獣医の診察が要る、と書いています。
活動が落ちた時、先に疑うのは環境
「前より動かない」という変化について、RSPCA Australiaは衰弱か低体温のサインかもしれないとした上で、順番を決めています。まずケージの温度が種に合っているかを確かめ、合っていれば爬虫類を診られる獣医へ、です。温度のほかに、RVCが挙げている点を並べます。
- UVBの期限。RVCはT5のUVBを6〜12か月ごとに交換するとしています。設置してから何か月経ったかを確かめます
- ガラス越しのUVB。RVCはよくある失敗の一つにこれを挙げ、ガラスはUVBを遮ると書いています
- サーモスタット。RVCは、すべての熱源にサーモスタットを付けるようにとしています
温度の目安やUVBの強さと距離は出典ごとに数字が違うので、この記事では並べず、フトアゴの温度管理とフトアゴのUVBライトの選び方に任せています。環境を見直しても変化が続くなら、環境ではなく体の問題として相談してください。
年1回の健診と、元気なうちの病院探し
出典は2つとも年1回の健診を勧めていますが、含まれる内容は出典で違います。
- RSPCA Australia:獣医が飼い主から話を聞き、外から体を診て、口の中を見て、糞を顕微鏡で検査する。血液検査もできる
- RVC:初回の診察と、体重測定、多くの場合は糞の寄生虫検査を含む年1回の健診
糞の検査はどちらにも入っているので、健診の日に新しい糞を持っていけるようにしておくと話が早くなります。
年1回の健診を受けるということは、受ける病院が元気なうちから決まっている、ということでもあります。この記事で挙げたサインには「すぐ相談する」側のものが多く、その時に探し始めるのでは遅くなります。迎える前か、迎えてすぐに候補を決めておいてください。相談する時に役に立つのは、体重の記録、気になる所の写真、温度計の実測値、UVBを設置した日、最後に糞が出た日です。
まとめ
- 爬虫類は病気を隠す動物です。サインが無いことが多く、出た時には急に悪くなります
- 見るのは行動・食欲・糞・体重の4つ。糞は毎日の除去のついでに、4つの見直しは少なくとも週1回、体重は週1回か月1回測って前回との差を見ます
- ブルメーション・産卵前・脱皮前に食べないのは普通です。理由の無い低下が続く、ブルメーション期以外で1〜2週間以上は相談の対象です
- 顎・四肢・姿勢の変化と震え、残った脱皮皮、いきんでも出ない、粘液を伴う開口呼吸、落ちくぼんだ目はすぐ相談です
- 動きが落ちたら、先に温度・UVBの期限・ガラス越し・サーモスタットを疑います
- 年1回の健診は出典により含まれる検査が違います。病院は元気なうちに決めておきます
診断と処置は、爬虫類を診られる動物病院に任せてください。この記事が扱ったのは、相談するかどうかを決めるために、どこを、どの頻度で見るかまでです。