フトアゴヒゲトカゲの餌を調べると、コオロギ、デュビア、ミルワーム、シルクワーム、ホーンワームと名前が並び、「どれが一番良いのか」で迷いがちです。ところが、獣医系の飼育情報には、虫の種類を順位づけしている箇所がほとんどありません。書かれているのは、脂肪の多い虫を毎日にしないこと、拾ってきた虫を与えないこと、与える前に虫に栄養のある餌を食べさせること、の3つです。

この記事の主な出典は、米国の動物病院グループ VCA Animal Hospitals の飼育情報ページ「Bearded Dragons: Feeding」です。獣医の Gregory Rich 氏、Laurie Hess 氏、Rick Axelson 氏が執筆し、2026年8月に更新されています。補助として、米イリノイ大学獣医学部の研究室が2019年に公開したブログ記事を使います。こちらは学生が自分たちの飼育個体について書いたもので、獣医の執筆ではありません。使うのは野生のホーンワームの話と、昆虫の比率で数字が割れる点に限り、数字は持ち込みません。豪州の動物保護団体 RSPCA Australia の記述は、ガットローディングの節で参照します。

餌の回数と量はフトアゴの餌はどれくらい?が、カルシウム粉の使い分けはフトアゴのクル病が、野菜はフトアゴにあげていい野菜・ダメな野菜一覧が持っています。この記事は、虫の種類と、与える前にすることに絞ります。

先に結論:虫選びの軸は「種類」より、脂肪が多い虫を毎日にしないことと、与える前の下ごしらえ

VCA のページで、昆虫について「してはいけない」「毎日はしない」と条件が付いているのは、次の3点です。

  • ワックスワームとスーパーワームは脂肪が多く、肥満につながりうるので、毎日は与えない
  • 庭や野外で捕まえた虫は、肥料や殺虫剤が付いている恐れがあるので勧めない。ホタルは有毒で、与えてはいけない
  • どの昆虫も、与える12時間以内にガットローディング(栄養のある餌を食べさせること)をする

一方、コオロギ、ミルワーム、デュビア、シルクワーム、ホーンワームについては、VCA は「動物性タンパクの例」として並べているだけで、順位は付けていません。虫の種類で悩む前に、上の3点を守れているかを確かめる方が、出典の書き方に沿っています。

獣医系の記事が挙げる餌昆虫(コオロギ・ミルワーム・デュビア・シルクワーム・ホーンワーム)と、その位置づけ

VCA が動物性タンパク源として挙げている昆虫と、それぞれに付いている条件を表にします。「位置づけ」の列は VCA の文章の言い換えで、この記事が独自に評価したものではありません。

餌 VCA での位置づけ 付いている条件
コオロギ 動物性タンパク源の例 カルシウムをまぶして与える
ミルワーム 動物性タンパク源の例 カルシウムをまぶして与える
デュビア(ゴキブリの一種) 動物性タンパク源の例 カルシウムをまぶして与える
シルクワーム 動物性タンパク源の例 条件の記載なし
ホーンワーム 動物性タンパク源の例 条件の記載なし(野生の個体は別。後述)
ワックスワーム 脂肪が多い 毎日は与えない
スーパーワーム 脂肪が多い 毎日は与えない
ピンキーマウス・ファジーマウス 大きい個体向け ごくたまに

コオロギ、ミルワーム、デュビアの3つに付いている「カルシウムをまぶして」は、虫の良し悪しではなく、昆虫食全般に対する補いの話です。粉の種類と使い分けはフトアゴのクル病にまとめているので、ここでは繰り返しません。

ピンキーマウスとファジーマウス(生まれて間もないマウス)は、VCA は大きい個体にごくたまに与えるものとしていて、昆虫と同列の主食ではありません。

イリノイ大学の学生ブログは、餌昆虫を選ぶ時にタンパクと脂肪だけでなく、カルシウムとリンの比も見るように、と書いています。ただし、種ごとの数値は出典によって食い違うため、この記事では引用しません。数値を比べて虫を選ぶより、まぶすカルシウムとガットローディングで補う、という VCA の立て方に戻る方が、出典の確かさの面では安全です。

脂肪が多い虫:ワックスワームとスーパーワームは「毎日は与えない」

VCA が名指しで「脂肪が多い」としているのは、ワックスワームとスーパーワームの2つです。理由は、脂肪が多いので肥満の原因になりうること。そのため「毎日は与えない」としています。

VCA は「与えてはいけない」とは書いていません。控えめに使うことは出典の範囲に入っています。一方、食いつきが良いからといって主食にすると、VCA が指している肥満の方向に進みます。「よく食べるから良い餌」とは限らない、というのがこの節の要点です。

食べる量が多すぎるサインはフトアゴの餌はどれくらい?の「多すぎ・少なすぎのサイン」の節に、体型の変化の見方はフトアゴヒゲトカゲの体調チェックにあります。

与えてはいけない虫:庭や野外で捕まえた虫・ホタル・野生のホーンワーム

ここは、出典が「勧めない」「与えてはいけない」と明確に書いている部分です。

対象 出典 理由
庭や野外で捕まえた虫 VCA 肥料や殺虫剤が付着している恐れがある
ホタル VCA 有毒。与えてはいけない
野生のホーンワーム イリノイ大学の学生ブログ 食べた植物(トマトやタバコ)の毒を体に溜めている

VCA が野外の虫を勧めない理由は、虫の種類ではなく、その虫が何を食べ、何に触れてきたかが分からないからです。ホーンワームはその分かりやすい例で、VCA は餌用のホーンワームを動物性タンパク源の例に挙げる一方、イリノイ大学の学生ブログは、庭で見つけた野生のホーンワームは与えてはいけない、としています。野生のホーンワームはトマトやタバコの葉を食べて育ち、その毒を体に溜めるからです。同じ名前の虫でも、餌用に育てられたものと野外のものは別物として扱います。

ホタルについては、VCA は有毒だと書き、与えてはいけないとしています。日本の家庭で餌にする場面は少ないかもしれませんが、野外の虫を使わないという原則に含めておく方が安全です。

ガットローディングとは何か:12時間以内(VCA)と、時間の数字が割れる件

ガットローディングは、餌にする昆虫に、与える前に栄養のある餌を食べさせておくことです。虫の腹の中身がそのままフトアゴの栄養になるので、虫を「入れ物」として使う、という考え方です。

VCA は、すべての昆虫について、与える12時間以内にガットローディングをするように書いています。虫に食べさせるものは、市販のガットローディング用フードか、新鮮な野菜です。虫に与える野菜は、フトアゴ自身に与える野菜と考え方が重なるので、フトアゴにあげていい野菜・ダメな野菜一覧が参考になります。

RSPCA Australia も、昆虫はガットローディングしたうえで、与える直前にカルシウムをまぶす、としています。中身を整えてから、直前に外側へカルシウムを足す、という2段階です。

時間の数字について1つ補足します。この記事では VCA の「12時間以内」を使いますが、他の飼育サイトでは別の時間を挙げている場合があります。この記事では獣医執筆の VCA の数字だけを置き、他の数字との比較はしません。

虫に頼りすぎないための確認:カルシウムとUVBは別の記事へ

昆虫を選び、ガットローディングをし、カルシウムをまぶしても、それだけでは足りない部分があります。VCA は、栄養の偏りが低カルシウム血症や代謝性骨疾患(MBD)につながるとし、同時に、サプリメントの与えすぎや間違いが飼育下では多いので、具体的な量は獣医に相談するように、としています。

この記事では、カルシウム粉の種類と頻度、UVBライトの役割には踏み込みません。これらはフトアゴのクル病が、サインの見方と予防に必要な環境として持っています。虫の選び方を整えた後に、カルシウムとUVBが揃っているかを、そちらで確かめてください。

VCA が書いている小さな点を2つ挙げておきます。餌皿は浅く倒れにくいものを使うこと、そして餌を扱った後の手洗いです。手洗いだけで足りない場面は爬虫類のサルモネラ対策にまとめています。

年齢で変わる昆虫の比率(出典で数字が割れる理由)

フトアゴの食事に占める昆虫の割合は、年齢で変わります。ここは出典の間で数字が割れる部分なので、数字を出さずに書きます。

VCA は、食事全体では植物性と動物性(昆虫)がおおむね半々で、年齢によって変わる、としています。若い個体は主に昆虫を食べ、成体になると植物寄りになる、という方向です。イリノイ大学の学生ブログも方向は同じですが、成体の動物性タンパクの割合として書いている数字は自分たちの飼育個体の運用例で、VCA の書き方とはかなり差があります。

方向は一致していて、数字は割れている。この記事では「若いうちは昆虫が多く、成体になるほど植物の比重が上がる」という方向だけを採り、割合の数字は置きません。成体で昆虫をどこまで減らすかは個体の体型や体調で変わるので、診てもらっている動物病院に相談する事項として残します。

幼い時期の時間割はフトアゴベビーの育て方に、成長につれて回数と量をどう変えるかはフトアゴの餌はどれくらい?の全長別の表にあります。

よくある質問

コオロギとデュビアはどちらが良いですか。 VCA はどちらも、カルシウムをまぶして与える動物性タンパク源の例として並べていて、優劣は付けていません。栄養成分を比べた表は出典ごとに数字が食い違うため、この記事では採用しません。どちらを選んでも、ガットローディングとカルシウムの条件は同じです。

ミルワームは与えてはいけないと聞きました。 VCA はミルワームを、カルシウムをまぶして与える動物性タンパク源の例に含めています。「脂肪が多いので毎日は与えない」と名指しされているのはワックスワームとスーパーワームで、ミルワームはそこに入っていません。

人工フードだけで、虫を与えなくても良いですか。 この記事の出典は、虫を与えることを前提に書かれていて、虫をまったく与えない飼い方の可否は答えが出ません。人工フードの選び方と切り替えの手順はフトアゴの人工フードの選び方にまとめています。

虫をたくさん食べるのに痩せてきました。 食べているのに体重が減る時は、餌の種類とは別に体調を疑う場面です。フトアゴヒゲトカゲの体調チェックの「すぐ相談するサイン」を確かめ、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。

まとめ

  • VCA(獣医が執筆)が動物性タンパク源の例として挙げているのは、コオロギ、ミルワーム、デュビア、シルクワーム、ホーンワームです。種類の優劣は付けていません
  • ワックスワームとスーパーワームは脂肪が多く、毎日は与えない。与えてはいけない、ではなく、控えめに、という位置づけです
  • 庭や野外で捕まえた虫は勧めない(肥料・殺虫剤の恐れ)。ホタルは有毒で与えてはいけません。野生のホーンワームは食べた植物の毒を溜めている(イリノイ大学の学生ブログ)ので、餌用に育てられたものと区別します
  • どの昆虫も、与える12時間以内にガットローディング(VCA)。与える直前にカルシウムをまぶす(RSPCA Australia)。時間の数字は飼育サイトによって異なるため、VCA の数字だけを置きました
  • 昆虫の比率は、若いうちは多く、成体になるほど植物寄り。割合の数字は出典で割れるので置きません
  • カルシウム粉とUVBはフトアゴのクル病、回数と量はフトアゴの餌はどれくらい?へ

虫の種類で迷ったら、まず「脂肪の多い虫を毎日にしていないか」「拾ってきた虫を使っていないか」「与える前に虫に餌を食べさせたか」の3つを確かめてください。食べているのに痩せる、食べなくなった、体型が変わった時は、餌の種類を変える前に、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。