アオジタトカゲは、オーストラリアやインドネシアなどに分布する地表棲のトカゲで、驚いたときに見せる青い舌で知られています。雑食で、人に慣れやすいとされる一方、全長45〜60cm前後(出典により幅があります)になり、体重も1kgほど(RSPCA Australia)ある体の重いトカゲでもあり、飼育下では肥満になりやすいという指摘が複数の出典にあります。

この記事では、RSPCA(英国の動物保護団体)、RSPCA Australia(豪州・獣医専門医が執筆)、RVC(ロイヤル獣医センターの日本語ケアシート)の3つの飼育ガイドをもとに、ケージの広さ、バスキング温度、UVB、湿度、床材、餌の割合を整理します。3出典の数字は一致していない項目が多く、この記事ではそれを1つに統一せず、出典名つきで割れたまま並べます。迎える前に、どの出典のどの数字を目安にするかを決めておくための材料として読んでください。

アオジタトカゲはどんな生き物か

基本データは、出典ごとに少しずつ違います。寿命は英国のRSPCAが「10年以上」、RSPCA Australiaが「飼育下で15〜20年」、RVCが「15〜20年、ときに30年ほど」としています。どれも10年を超える長い付き合いになる、という点では共通しています。

項目 RSPCA(英国) RSPCA Australia RVC(獣医のケアシート)
寿命 10年以上 飼育下で15〜20年 15〜20年、ときに30年ほど
大きさ 約50〜60cm 最大約60cm、体重約1kg 尾を含めて45〜60cm
飼育難易度 記載なし 記載なし 中級
食性 雑食 雑食 雑食

RVCは飼育難易度を「中級」としています。人に慣れやすく丈夫とされる種ですが、体が重く、広い床面積と高温のバスキングゾーン、バランスのとれた雑食の食事が必要で、それが揃わないと肥満につながるというのが同じケアシートの説明です。英国のRSPCAも、飼育下では高タンパクの食事と運動不足で肥満になりやすいとして、月1回の体重測定を勧めています。

生態として知っておきたいのは、地表で暮らし、登るのが苦手という点です。RSPCA Australiaは、短い脚のため登ることが難しいとしています。昼行性で、朝にバスキングして体を温めてから餌を探し、食べ終わると岩や倒木の下に戻る、という過ごし方が紹介されています。

迎える前に決めること:亜種と、飼育下繁殖個体

英国のRSPCAは、アオジタトカゲには多くの種・亜種が流通しているため、自分が飼う種を正しく特定しておくように、としています。これは単なる分類の話ではなく、後で出てくる湿度の設定に直結します。RVCも、湿度はタイプによって異なるので、飼っている個体の亜種を確認するように、としています。

RSPCA Australiaのケアシートが対象にしているのは、東部アオジタトカゲ(Tiliqua scincoides scincoides)です。この記事でRSPCA Australiaの数字として挙げるものは、原則としてこの亜種についてのものと読んでください。

もう1つ、2つの出典が共通して挙げているのが、飼育下繁殖(CB)個体を選ぶことです。英国のRSPCAは、自国内で飼育下繁殖された個体だけを入手するように、としています。RVCも、野生採集の輸入個体よりCB個体を選ぶように、としています。

迎える時期について、RSPCA Australiaは、生後3〜6か月以上の幼体か成体を迎えるのがよいことが多いとしています。その頃には餌を安定して食べ、順調に成長していることが確かめられるためです。成体は新しい環境と飼い主に比較的すぐ慣れる、ともしています。

英国のRSPCAは、迎える前に飼育環境を組んで最低1週間稼働させるように、としています。機器の不具合が出るのを待ち、生体が来る前に管理に慣れるためです。この記事の以降の節は、その1週間で何を確かめるか、という視点でも読めます。

ケージは高さより床面積

3出典とも、アオジタトカゲのケージは長さと床面積を取ることが基本です。RSPCA AustraliaとRVCは、高さより床面積が重要としています。ただし、具体的な寸法は割れています。

出典 成体1匹のケージ 補足
RSPCA(英国) 最低 長さ120cm×高さ75cm×奥行75cm 密閉できる固い素材。換気を十分に
RSPCA Australia 長さ1.2〜1.8m×幅0.6m×高さ0.6〜0.9m 地表棲なので、高さより長さ
RVC(獣医のケアシート) 床面積 約120×60cm以上、できればさらに広く 高さより床面積が重要

長さ120cmという数字は3出典で共通していますが、英国のRSPCAはそれを「最低」としており、RSPCA Australiaは上限を1.8mまで取っています。RVCも「できればさらに広く」としています。120cmを満たせば十分、というよりは、120cmが下限で、そこから広げる余地があるほどよい、という読み方になります。

奥行(幅)は、英国のRSPCAが75cm、RSPCA Australiaが60cm、RVCが60cmで、ここも割れています。高さは、英国のRSPCAが75cm、RSPCA Australiaが60〜90cmで、RVCは高さより床面積を優先するとだけ書いています。

寸法のほかに、英国のRSPCAは、脱走できない構造であること、換気が十分であること(細菌の繁殖と感染を減らすため)、すきま風、暖房器具、直射日光から離して置くこと(温度変化を避けるため)を挙げています。RSPCA Australiaは、登れない種なので平らな大きめのバスキング用の石を置くとよい、としています。

ケージの素材や前開き・上開きの違いなど、ケージそのものの選び方は初めてのケージ選びで整理しています。この記事では、アオジタトカゲの場合に床面積がどれだけ要るか、という点に絞っています。

バスキング温度は出典で割れる

温度は、この記事の中でいちばん出典の差が大きい項目です。先に表で並べます。

項目 RSPCA(英国) RSPCA Australia RVC(獣医のケアシート)
バスキングゾーン 30〜32℃(若い個体は35℃まで) 勾配 27〜42℃の中で、好む体温は30℃台前半 35〜40℃(バスキング面)
ウォーム側の周囲温度 記載なし 記載なし 24〜29℃
クール側 22〜25℃ 記載なし 22〜24℃
夜 20〜22℃ 記載なし 18〜22℃

バスキングの数字だけを見ると、英国のRSPCAは30〜32℃、RVCは35〜40℃で、重なっていません。RSPCA Australiaは、ケージの両端で27℃から42℃までの温度勾配を作り、その中からトカゲ自身が選べるようにする、という書き方で、特定の1点を指定していません。好む体温は30℃台前半としています。

このため、この記事では「バスキングは何℃」と1つに決めません。共通して言えるのは、熱源を片側に置いて温度勾配を作り、温度計で実際のバスキング温度を測り、個体がどこで過ごしているかを見る、という考え方です。RSPCA Australiaが挙げている「勾配の中からトカゲが選ぶ」という前提は、英国のRSPCAもRVCも同じで、片側に熱源を置いて暖かい側と涼しい側を作ることを求めています。

熱源の置き方について、英国のRSPCAは、適切なワット数のハロゲン球か、光を出さないセラミックヒーターを下向きに取り付け、ガードを付けるように、としています。熱源にはすべてサーモスタットを付け、感知部(プローブ)は床材の上に置きます。バスキングゾーンには直径30cmほどの平たい石を置くとよいとする一方、トカゲの背中が熱源から25cm以内に近づかないように、としています。

測り方について、英国のRSPCAは、サーモスタットは常に正確とは限らないので、デジタル温度計のプローブをクール側とバスキングゾーンの2か所に置き、毎日最高と最低の温度を確かめるように、としています。赤外線温度計で毎日2か所を確かめる方法も挙げられています。

夜の温度は、英国のRSPCAが20〜22℃まで、RVCが18〜22℃に向けて下げる、としています。室温がそれより下がる場合、英国のRSPCAはサーモスタットを付けたセラミックヒーターを使う形を挙げています。

UVBは必須で、ガラス越しでは届かない

UVBについては、3出典とも必要としていますが、どれだけの強さをどう与えるかで割れています。

項目 RSPCA(英国) RSPCA Australia RVC(獣医のケアシート)
UVBの強さ UVI 3.0〜5.0(バスキングゾーン)から日陰の0まで勾配を作る 人工のUVライトか、濾過されていない日光を週4〜6時間 UVI 約3.0〜4.0(ファーガソン・ゾーン3)
管の種類・配置 高さ60cmのケージで6%の管。長さはケージの約半分。天井のホット側寄りに反射板つきで 記載なし トカゲが近づきすぎない位置に
アルビノなど 日陰0から最大3.0まで 記載なし 記載なし
照明時間 12時間(タイマーで) 12時間以上 12時間

UVI(紫外線指数)の数字は、英国のRSPCAが3.0〜5.0、RVCが約3.0〜4.0で、下限は揃っていますが上限が違います。RSPCA Australiaは数字ではなく「人工のUVライトか、ガラスなどで濾過されていない日光を週4〜6時間」という形で書いています。

UVIという指標そのものと、UVB管の%表記の読み方は、フトアゴヒゲトカゲのUVBライトで整理しています。アオジタトカゲ固有の点として、英国のRSPCAは、アルビノなど一部のモルフはUVBを弱くする必要があり、日陰の0からバスキングゾーンで最大3.0までの勾配にする、としています。飼う個体がアルビノ系であれば、この数字が目安になります。

ガラス越しについて、英国のRSPCAは、UVBは窓ガラスを通らないので、ケージを窓際に置くのではなく、ケージの中に爬虫類用のUVBランプを設置するように、としています。日光で代用するというRSPCA Australiaの書き方も「濾過されていない」が条件です。窓ガラス越しはUVBを通さないとされているので、室内の窓越しの光ではこの条件を満たしにくくなります。

UVBの出力は時間とともに落ちます。英国のRSPCAは、UVIメーターを生体の高さに置いてランプに向け、定期的に測るように、としており、交換はメーカーの指示に従うとしています。RVCもMBD(代謝性骨疾患)の予防として、UVBを期限どおりに交換することを挙げています。ランプにはガードを付け、夜はすべての照明を消します。

湿度は亜種で変わる

湿度は、3出典の中で「数字そのものを出さない」出典と「亜種ごとに数字を分ける」出典があります。

英国のRSPCAは、産地ごとに適した湿度が違うため、自分の種・産地に合わせて設定するように、としていて、具体的な%は書いていません。湿度計はケージのクール側で測るように、としています。RSPCA Australiaは、東部アオジタトカゲについて、平均40〜60%としていて、デジタル湿度計のプローブをクール側の地面に置いて測るとしています。これより高くても低くても体調を崩すことがある、という書き方です。RVCは、オーストラリア産や北部の個体は40〜60%、インドネシア産の個体は60〜80%と、タイプで分けています。

つまり、湿度の数字は「亜種が分かっていないと決められない」項目です。前の節で、迎える前に種・亜種を特定するとしたのは、ここに効いてきます。

湿度の調整について、英国のRSPCAは、低いときはきれいな濾過した水を霧吹きし、高いときは換気を増やすように、としています。RSPCA Australiaは、植物を入れすぎると開けた草地に暮らすこの種には湿度が高くなりすぎることがある、と注意しています。英国のRSPCAは、湿らせたミズゴケを入れたシェルターで局所的に湿度の高い場所を作る形も挙げています。

脱皮にも湿度が関わります。英国のRSPCAは、脱皮は大きな破片で脱ぐこと、脱皮不全は低湿度が原因のことが多いこととしています。RSPCA Australiaは、数回に分かれて脱ぐとして、指先と尾の先に残りがないかを見るように、としています。

床材:掘れる厚みと、飲み込みやすい床材を避ける

アオジタトカゲは潜る種なので、3出典とも、掘れる床材を勧めています。

英国のRSPCAは、約10cmの厚みの床材を敷くとしています。潜る行動を保つことに加え、ストレスを減らし、自分で湿度を調整する助けになる、という理由です。材料は天然の土か、土と砂の混合としています。RSPCA Australiaは、砂質から粘土質までの土、またはバークとしていて、フンと尿酸は毎日取り除き、汚れた床材はその都度すくって替え、2〜3週間ごとに全交換するとしています。RVCは、腐葉土とヤシガラを混ぜたものや、バイオアクティブ土壌など、深く掘れるものを挙げています。

避ける床材について、英国のRSPCAは、カルシウムサンド、ウッドチップ(ブナ)、コーンコブ、クルミ殻を名指しで挙げています。消化管に詰まって腸閉塞(インパクション)を起こすおそれがあるためです。RVCも腸閉塞の予防として、飲み込みやすい粒状の床材を避けること、消化に十分なバスキング温度を保つこと、水分補給を確保することを挙げています。

掃除について、英国のRSPCAは、フンはすぐに取り除き、月1回は爬虫類に安全な消毒剤でケージ全体を清掃するとしています。掃除や触れ合いの前後に手を洗うことも同じ出典が挙げています。サルモネラについては、獣医師団体のARAVが、すべての爬虫類を保菌している可能性があるものとして扱うよう求めています(詳しくは爬虫類のサルモネラ対策)。

餌:雑食。割合は出典で割れる

アオジタトカゲは雑食で、植物と動物の両方を食べます。問題は、その割合です。

出典 成体の割合 給餌頻度
RSPCA(英国) 動物性50〜60%、野菜40〜50%、果物は10%まで 若い個体は少量を頻繁に
RSPCA Australia 昆虫などの動物性が50%(1歳未満は70%) ベビー(〜3か月)毎日/3〜8か月 週3回/8か月以上 週1〜2回
RVC(獣医のケアシート) 植物と動物がおよそ50対50 幼体は1〜2日ごと/成体は週2〜3回

割合は、動物性を「50%」とするRSPCA AustraliaとRVCに対し、英国のRSPCAは「50〜60%」と動物性をやや多めに取っています。成長期の個体について、RSPCA Australiaは1歳未満で動物性70%としています。

頻度は、成体で「週1〜2回」(RSPCA Australia)と「週2〜3回」(RVC)で、ここも1回分ずれています。

割合と頻度に幅がある一方で、RVCと英国のRSPCAが揃って注意しているのが肥満です。RVCは、タンパク質が多すぎると肥満につながるとして、引き締まった体を保つように量を調整する、としています。英国のRSPCAも、高タンパクの食事と運動不足が肥満の原因になるとして、月1回の体重測定を勧めています。

餌の中身で特徴的なのは、カタツムリです。英国のRSPCAは、野生では主な餌であり、飼育下でも含めるべきとしています。ただし、野外のカタツムリは農薬や寄生虫を含むおそれがあるので直接与えず、爬虫類ショップで扱う生きたものや缶詰のものを使うように、としています。野菜については、ほうれん草のあげすぎはカルシウムの吸収を妨げ、ケールのあげすぎはホルモン生成に影響するとして、どちらも量に注意するよう挙げています。

冬の食欲の変化について、英国のRSPCAは、気温と日照時間の低下でブルメーション(食べる量が減り、眠る時間が増える状態)に入ることがよくあり、健康な個体なら心配はないとしています。ただし、長い時間をかけてではなく突然食べなくなった場合や、体重が大きく減る場合は、爬虫類を診られる獣医に相談するように、としています。

カルシウムやビタミンの粉をまぶす量や生き餌の扱い方には、出典ごとに細かい前提があり、過剰にも注意が要るとされています。この記事では割合と頻度の幅までにとどめ、サプリメントの具体的な量は、英国のRSPCAと同じく、爬虫類を診られる獣医に相談することを勧めます。

触れ合いと、単独飼育

同居について、3出典の答えは揃っています。英国のRSPCAは、縄張り意識が強いため別々に飼うとして、同居させると互いの足を噛んだり、殺し合ったりすることがあるとしています。RSPCA Australiaも、同じケージで複数飼うと喧嘩になり、重い、ときに致命的な怪我につながるとして、1ケージ1匹を勧めています。RVCも単独飼育で、同居は競合、ストレス、咬みつき、餌の独占を招くとしています。

人との触れ合いについては、慣れればハンドリングに耐える種とされています。英国のRSPCAは、環境に慣れてからであれば触れ合いに耐えるが、咬む力はそれなりに強く、慣れるまでに時間が要る、としています。掴むのではなく、両手ですくい上げて4本の脚をすべて支える持ち方が示されています。後ずさりしたり、口を開けて舌を見せたりするときは、別の機会にするのがよいとしています。RVCも、常に体を支え、掴むことは避けるように、としています。

ケージの外に出す時間について、英国のRSPCAは、体温が下がらないよう10〜15分程度を目安としています。爪が鋭いので、カーペットや衣服に引っかからないよう注意する、ともしています。

RSPCA Australiaは、尾の自切についても触れています。捕食者から逃れるために尾を自ら切ることがあり、再生はしますが、変形した軟骨質の突起として生えてくる、としています。

まとめ(迎える前のチェック)

この記事で並べた数字を、迎える前に確かめる点として並べ直します。

  • 種・亜種を特定する。湿度の設定(RSPCA Australiaは東部亜種で40〜60%、RVCはインドネシア産で60〜80%)は亜種が分からないと決められない
  • 飼育下繁殖(CB)個体を選ぶ。英国のRSPCAとRVCが共通して挙げている
  • ケージは床面積優先。長さ120cmは3出典で共通だが、英国のRSPCAはそれを最低とし、RSPCA Australiaは1.8mまで、RVCは「できればさらに広く」としている
  • バスキング温度は割れている。英国のRSPCAは30〜32℃、RVCは35〜40℃、RSPCA Australiaは27〜42℃の勾配。幅の中で設定し、クール側とバスキングゾーンの2か所を毎日測る
  • UVBは必須。UVIは英国のRSPCAが3.0〜5.0、RVCが約3.0〜4.0。アルビノなどは最大3.0(英国のRSPCA)。ガラス越しでは届かない。照明は12時間
  • 床材は約10cm(英国のRSPCA)の掘れる土系。カルシウムサンド、ウッドチップ、コーンコブ、クルミ殻は避ける
  • 餌は雑食で、動物性の割合は50%(RSPCA Australia・RVC)から50〜60%(英国のRSPCA)。肥満に注意し、月1回体重を測る
  • 1ケージ1匹。同居は3出典とも勧めていない
  • 迎える前に、環境を組んで最低1週間稼働させる(英国のRSPCA)

RVCのケアシートは、すぐに動物病院へ行く目安として、粘液やゼーゼーという音を伴う開口呼吸、顎が柔らかい・腫れている、四肢が曲がりやすい、いきんでも排便がなくお腹が張っている、1〜2週間以上餌を拒んで元気がない、著しい肥満で動いたり呼吸したりするのが難しい、を挙げています。英国のRSPCAは、UVB不足によるMBD、ビタミンA欠乏、寄生虫、ダニを飼育下でよくある問題として挙げています。

体の様子で気になることがあるときは、自己判断で様子を見続けず、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。