アオジタトカゲは雑食で、昆虫やカタツムリなどの動物性のものと、野菜や果物などの植物性のものの両方を食べます。何を用意すればよいかは、飼育ガイドごとに挙げている食材が少しずつ違い、同じ食材でも「例として挙げる」出典と「あげすぎに注意」とする出典に分かれるものがあります。
この記事では、RSPCA(英国の動物保護団体)、RSPCA Australia(豪州・獣医専門医が執筆)、RVC(ロイヤル獣医センターの日本語ケアシート)の3つの飼育ガイドをもとに、動物性と植物性それぞれの中身、餌虫の準備、与え方、そして減らしたい・与えない食材を整理します。動物性と植物性の割合や、週に何回与えるかという頻度は、アオジタトカゲの飼い方の「餌」の節で出典別に並べているので、この記事では繰り返しません。ここで扱うのは「何を、どう用意し、何を避けるか」です。
何をあげるか:動物性と植物性の両方
3出典に共通するのは、動物性と植物性の両方を与える、という枠組みです。英国のRSPCAは、アオジタトカゲは雑食で、食事には植物と動物の両方を含めるべきだとしています。RSPCA Australiaは、昆虫などの動物性の餌と野菜、卵、果物を組み合わせて与える形を示しています。RVCも、葉物や野菜などの植物性に、昆虫やカタツムリ、肉、卵などのタンパク源を加えるとしています。
出典が挙げる食材は、昆虫とカタツムリ、野菜と果物、卵・肉などの補助的なタンパク源、の3つに大きく分けられます。どの出典も、どれか1つに偏らせず、幅広く与えることを前提にしています。以下の節で、分類ごとに中身を見ていきます。
動物性の中身:昆虫とカタツムリ
昆虫の種類は、出典によって挙げ方が違います。英国のRSPCAは、適切な大きさの生きた昆虫を種類を変えて与えるとして、コオロギ(ブラウンハウスクリケット)、カルシワーム、ワックスモス幼虫、フルーツビートル幼虫、デュビア、シルクワーム、バッタ(ロカスト)を例に挙げています。ワックスモス幼虫やフルーツビートル幼虫は、英国の出典が挙げる例として読んでください。RSPCA Australiaは、コオロギ、ゴキブリ、ミールワームのほか、ナメクジとミミズも挙げています。RVCは種類を特定せず、ガットローディングした昆虫としています。
英国のRSPCAは、食べ残した生きたコオロギやバッタは取り除くように、としています。残った虫がトカゲを噛むことがあるためです。
カタツムリは、この種の餌としてもっとも特徴的なものです。英国のRSPCAは、野生ではカタツムリが主な餌であり、飼育下でも含めるべきとしています。RSPCA Australiaも、野生で好む餌の1つにカタツムリを挙げ、強い顎でそのまま噛み砕いて飲み込むと説明しています。RVCもタンパク源の1つとしてカタツムリを挙げています。
ただし、入手先には注意が要ります。英国のRSPCAは、生きたカタツムリや缶詰のカタツムリは爬虫類ショップで入手できるとして、屋外で採ったカタツムリをそのまま与えないように、としています。農薬や寄生虫を含むおそれがあるためです。同じ出典は、カタツムリが食事と行動の両方を豊かにするとしています。
野菜と果物:出典の例と、あげすぎ注意
野菜と果物は、3出典の中でいちばん「具体名を挙げるかどうか」が割れている項目です。
| 出典 | 野菜 | 果物 |
|---|---|---|
| RSPCA(英国) | 安全な植物・野菜・果物を自分で調べて与える。ほうれん草とケールはあげすぎに注意 | 全体の10%まで |
| RSPCA Australia | 緑と赤の野菜:ほうれん草、色のついたレタス、トマト、赤・緑のピーマン、マッシュルーム、バラの花びら | 季節のもの:リンゴ、バナナ、ナシ、イチジク、メロン、プラム、キウイ、レーズン、イチゴ |
| RVC(獣医のケアシート) | 葉物、野菜、食べられる花 | 少量 |
英国のRSPCAは、具体的な野菜名をほとんど挙げず、安全な植物・野菜・果物を飼い主が調べて与えるように、という書き方です。その上で、2つの野菜について量の注意を出しています。ほうれん草のあげすぎはカルシウムの吸収を妨げ、ケールのあげすぎはホルモンの生成に影響する、としています。
一方、RSPCA Australiaは、緑と赤の野菜の例としてほうれん草を最初に挙げています。つまり、ほうれん草は「例として挙げる」出典と「あげすぎに注意」とする出典に分かれています。どちらも「与えてはいけない」とはしていないので、この記事では、与える場合は量を抑える食材、と読んでおきます。
果物について、英国のRSPCAは全体の10%までとしています。RVCは「少量」です。RSPCA Australiaは割合を書かず、季節のものとして、リンゴ、バナナ、ナシ、イチジク、メロン、プラム、キウイ、レーズン、イチゴを挙げています。英国のRSPCAとRVCは、果物を少なめにとどめる書き方です。
野菜の扱いについて、英国のRSPCAは、食べ残した野菜は毎日取り除いて新しいものに替えるとしています。
たんぱく質の補助:卵・肉・缶詰ドッグフード・マウス
卵は3出典に共通します。英国のRSPCAは卵を挙げ、別の箇所で、殻を割ったウズラの卵が、変化のある食事の一部としてカルシウムとビタミンAの補給になるとしています。RSPCA Australiaは、生か茹でた卵を時々、具体的には2〜3週間に1回としています。RVCは「ときどき卵」です。頻度を数字で書いているのはRSPCA Australiaだけです。
肉と缶詰のドッグフードは、英国のRSPCAとRVCが挙げています。英国のRSPCAは、適切なブランドの缶詰ドッグフードと、七面鳥・鶏・赤身の牛の挽き肉を挙げています。RVCは、脂肪の少ない加熱した肉と、良質なウェットタイプのドッグフードを「適度に」としています。RSPCA Australiaは肉やドッグフードを挙げていません。
ドッグフードは2出典で「可」に見えますが、RVCは肥満の予防として、脂肪の多いタンパク質やドッグフードの与えすぎを避けるように、と同じケアシートの別の箇所で注意しています。英国のRSPCAも「適切なブランド」という条件つきです。与えてよいが、主役にはしない、という読み方になります。
マウスについては、英国のRSPCAだけが触れています。冷凍解凍のピンキーラットやファジーマウスは、ご褒美程度にとどめるように、としています。
昆虫を準備する:ガットローディングとカルシウム
餌虫をそのまま与えるのではなく、与える前に餌虫自身に栄養を取らせておくことを、3出典とも前提にしています。これをガットローディングと呼びます。
英国のRSPCAは、餌虫は大きく換気のよい容器で飼い、安全な野菜を食べさせて十分に水分を与えるとしています。餌虫自身の福祉のためと、その栄養がトカゲに渡るようにするためです。その上で、与える24〜48時間前に、ガットローディング用の配合飼料を食べさせてビタミンとミネラルを補うとしています。RSPCA Australiaは、昆虫をガットローディングし、与える直前にカルシウムの粉をまぶすとしています。RVCも、ガットローディングした昆虫と書いています。
つまり、ガットローディングは「与える1〜2日前」(英国のRSPCA)、カルシウムの粉をまぶすのは「与える直前」(RSPCA Australia)と、タイミングが違います。餌虫の飼い方とガットローディングの手順は、レオパの生き餌で整理しています。レオパ向けの記事ですが、餌虫そのものの扱いは共通です。
サプリメントの頻度と量は、出典で割れています。英国のRSPCAは、飼育環境では野生で得られるビタミンとミネラルがすべて揃わないため、餌にサプリメントの粉を軽くまぶすとしつつ、ビタミンもミネラルも過剰になりうるので製品の指示を守るように、としています。UV環境が整っていれば食事から高いD3を取る必要はない、という例も挙げられています。RSPCA Australiaは、昆虫には与える直前にカルシウム、野菜には2週間に1回マルチビタミン、と分けています。RVCは、カルシウムと総合ビタミン剤を適切にダスティングする、としています。
この記事では、具体的な量や回数は書きません。英国のRSPCAが、サプリメントについては爬虫類を診られる獣医に相談するように、としているのと同じ立場です。
与え方:時間帯・食べ残し・水
与える時間帯について書いているのは、RSPCA Australiaです。昼行性で、朝にバスキングして体を温めてから餌を探す生き物なので、餌は午前の遅い時間から昼にかけて、トカゲがバスキングを済ませて動き出した後に出すのがよいとしています。
食べ残しの扱いは、英国のRSPCAとRSPCA Australiaが書いています。RSPCA Australiaは、食べ終えるまでは餌をケージに置いておいてよいが、食べ終えたら取り除くとしています。英国のRSPCAは、前述のとおり、食べ残した生きたコオロギやバッタは噛むことがあるので取り除き、野菜は毎日取り替えるとしています。
水について書いているのは英国のRSPCAです。大きく浅い皿にきれいな水を入れ、クール側に常に置いておくとしています。水は毎日替え、トカゲが水入れの中で排泄したときもその都度替えます。溜めた水を飲まない個体もいるので、その場合は湿度に応じて毎日か1日おきにケージに軽く霧吹きし、野生でするように水滴を集めて飲めるようにするとしています。
肥満を避ける:体重測定と、あげすぎない食材
英国のRSPCAとRVCが揃って注意しているのが肥満です。英国のRSPCAは、飼育下のアオジタトカゲは肥満になりやすく、原因は高タンパクの食事と運動の制限だとしています。対策として、月に1回体重を測ることを勧めています。RVCも、タンパク質が多すぎると肥満につながるとして、引き締まった筋肉質の体を保つように量を調整する、としています。
RVCは、肥満の症状として、脂肪のたるみ、平たく広がった体、筋緊張の低下、動きの鈍さを挙げています。著しい肥満で動いたり呼吸したりするのが難しい場合は、すぐに動物病院へ、としています。
この記事で挙げた食材のうち、量に注意する書き方がされているものを並べます。
- ほうれん草:あげすぎはカルシウムの吸収を妨げる(英国のRSPCA)
- ケール:あげすぎはホルモンの生成に影響する(英国のRSPCA)
- 果物:全体の10%まで(英国のRSPCA)、少量(RVC)
- 脂肪の多いタンパク質、ドッグフード:与えすぎを避ける(RVC)。缶詰ドッグフードは適切なブランドに限る(英国のRSPCA)
- ピンキーラット・ファジーマウス:ご褒美程度(英国のRSPCA)
- サプリメント:過剰になりうるので指示を守る(英国のRSPCA)
どれも「与えてはいけない」ではなく「量に注意」です。これに対して、屋外で採ったカタツムリは、農薬や寄生虫のおそれがあるため与えない、と英国のRSPCAが明確に書いています。
配合飼料という選択肢
英国のRSPCAは、ここまでの食事の代わりに、雑食の爬虫類向けに作られた配合飼料を使う選択肢も挙げています。動物性と植物性の比率が整えられたもので、多くは粉末を水で溶いて与える形だとしています。この選択肢に触れているのは英国のRSPCAだけで、RSPCA AustraliaとRVCは配合飼料を挙げていません。
まとめ(迎える前・毎回見る点)
迎える前に用意するもの
- 昆虫は種類を変えて。カタツムリは爬虫類ショップの生きたものか缶詰(英国のRSPCA)。屋外で採ったものは与えない
- 野菜と果物。果物は少なめ(英国のRSPCAは全体の10%まで、RVCは少量)。ほうれん草とケールは量を抑える(英国のRSPCA)
- 卵。3出典に共通。RSPCA Australiaは2〜3週間に1回
- カルシウムの粉と、餌虫のガットローディング用の飼料
- 体重計。月1回の体重測定(英国のRSPCA)
- 割合と頻度はアオジタトカゲの飼い方の「餌」の節で出典別に
毎回の給餌で見る点
- 餌虫はガットローディング済みか(英国のRSPCAは24〜48時間前)、カルシウムをまぶしたか(RSPCA Australiaは与える直前)
- 出す時間帯は、バスキングを済ませて動き出した後か(RSPCA Australia)
- 食べ残した生きた虫を取り除いたか。野菜と水は毎日替えたか
餌を食べない、体重が急に減った、あるいは体が明らかに太ってきたなど、食事に関して気になることがあるときは、自己判断で続けず、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。サプリメントの量や、持病のある個体の食事についても同じです。