クレステッドゲッコー(クレス)は、ベビーで迎える人が多い種です。「成体の飼い方は調べたけれど、この小ささで同じでいいのか」という不安を持ったまま連れて帰ることになります。この記事では、クレスのベビー期に成体と何を変え、何を変えなくてよいかを、落下・乾燥・尾の三つを軸に整理します。飼育全体の前提はクレステッドゲッコーの飼い方を参照してください。ケージ・餌・床材・湿度の各論はそれぞれの記事が持っているので、ここでは「ベビー期にそれらをどう組み合わせるか」だけを扱います。

クレスのベビーは「小さい成体」ではない:効くのは落下と乾燥

クレスのベビー飼育は、餌の用意そのものは難しくありません。餌の中心が水で溶いたCGDなので、生き餌のサイズを成長に合わせて変えていく手間がないためです。

代わりに先に効いてくるのが、落下と乾燥です。

クレスは樹上性で、ハンドリングの記事で触れているとおり、よく跳び、よく落ちる生き物です。ベビーはこの性質がいっそう強く出ます。体が軽いので跳んだ先に足場がなくても宙に出てしまい、距離の見積もりもまだ雑です。成体なら軽い落下で済む高さでも、ベビーは打ちどころによって怪我につながります。

乾燥については、体が小さいほど体内の水分の余裕が少なく、同じ乾いた空気でも影響が先に出ます。クレスの湿度の目安60〜80%は成体でもベビーでも変わりませんが、そこから外れた時に体調へ響くまでの時間がベビーは短い、と考えてください。

そしてもう一つ。クレスの尾は、自切すると二度と再生しません。レオパでは尾が再生するので「ベビーのうちに慣らしておく」という発想が成り立ちますが、クレスでは、慣らす過程で尾を失えば一生そのままです。ベビー期の扱いはこの前提から逆算します。

ベビー期はいつまでか

この記事では、ベビー期を月齢や体重で区切りません。うちのクレスの記事群では成長段階を数字ではなく状態で表していて、床材の記事が「お迎え〜体がしっかりするまで」をベビー、「餌を安定して食べ、体格ができてから」を成体としているのに揃えます。

数字で切らないのは、孵化の時期や繁殖元の環境で成長の速さが違い、同じ月齢でも体格に幅が出るからです。月齢を見て「もうベビーではない」と判断すると、体ができていない個体に成体の扱いを持ち込みやすくなります。見るのは暦ではなく個体です。

ベビー期を抜けたと判断してよいのは、次の状態が揃った時です。

  • CGDの減りが安定し、糞が決まったリズムで出ている
  • ケージの中段から上段まで使って過ごしている
  • 脱皮のたびに指先や尾の先に皮が残らなくなった
  • 同じ道具で測った体重が、増える方向で動いている

どれか一つではなく、揃ってから次の段階に進みます。

ケージは小さめから:高さより「落ちても平気な作り」

クレスのケージは高さで選ぶのが基本ですが、ベビー期に限っては順番が変わります。まず落ちても平気な作りにし、高さはあとから足します。

ケージの記事にも、導入直後の幼体は大きすぎるケージだと落ち着かず、餌の食べ具合や体調の変化も把握しにくいので、小さめの容器から始めて成長に合わせて移行する飼い方があると書いています。ベビー期に小さめから始めるのは、それに加えて落下距離を短くするためでもあります。

  • 足場を密にする。枝と枝、葉と葉の間隔を詰め、跳ばなくても渡れるようにします。跳ぶ距離が読めないベビーに、跳ばなくてよい環境を作るのが先です
  • 床の近くにも受けを作る。人工植物や葉を床付近にも入れて、落ちた時に硬い床へ直接当たらないようにします
  • 水入れは浅く、小さく。ベビーは水入れに落ちて出られなくなることがあります。霧吹きで葉や壁面に付いた水滴を舐めるのがクレスの飲み方なので、深い水入れは要りません
  • 床材は紙。理由と切り替えの時期は床材の記事が持っているので繰り返しません

ケージを大きくするのは、小さめのケージの上段まで使いこなしている様子が見えてからで遅くありません。

乾燥に弱い:ベビー期の湿度の考え方

湿度は、夜に上げて日中に一度下げる波で作ります。作り方は温度と湿度の記事にまとめており、ベビーでも変わりません。ベビー期に変えるのは、波の「確認の仕方」です。

  • 夜の霧吹きを欠かさない。ベビーは体の水分の余裕が小さく、乾いた夜が続くと脱皮や食欲にすぐ響きます
  • 朝に温湿度計を見る。夜に上がった湿度が朝まで残っているかを数字で見ます。床材が紙だと湿度を戻す素材がないので、通気の良いケージでは霧吹きの直後だけ上がってすぐ落ちることがあります。落ちが早いなら、霧吹きの時間帯を遅らせるか、葉を増やして水滴が残る面を増やします
  • 温湿度計はベビーが過ごしている高さに置く。床の近くは高く出ます。小さいケージでも、置く高さの習慣はここで付けておきます

一方で、乾燥が怖いからと常に湿らせたままにするのは別の失敗です。小さいケージは空気の量が少なく、通気が足りないとすぐ蒸れます。日中に一度乾く波は崩さず、ガラス面の結露が日中も消えないなら通気側を見直してください。

餌:食べているかを、どこで見るか

CGDの溶き方、与える頻度、食べない時に確認する順番は餌の記事が持っています。同じ記事に、成長期の幼体は代謝が高く、成体より頻度を上げて与えるのが一般的だとあるので、ベビー期はこの「頻度を上げる」側に置きます。頻度の数字は製品の表示を基準にしてください。

ベビー期に問題になるのは、頻度より「食べているかどうかが分かりにくい」ことです。ベビーが一晩に舐める量はごくわずかで、皿の減りだけでは判断できません。見る場所を皿以外に持っておきます。

  • 。紙の床材の上に、決まったリズムで出ているか。食べていれば出ます
  • 皿の表面。減った量ではなく、舐めた跡が付いているか。明るい場所で斜めから見ると分かります
  • 体つき。腰骨が目立ってきていないか、尾の付け根が細くなっていないか

減りが分からないからと量を増やしても、ベビーが食べる量は変わりません。増えるのは傷んだCGDだけです。皿は小さく、登り木の近くの、移動の途中で出会える高さに置きます。

食べている様子がどこにも見えない状態が続く時は、餌の記事の確認順を一通り見直したうえで、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。ベビーは体力の余裕が小さいので、成体より早めに切り替えます。

ハンドリングは後回し:尾は再生しない

ベビー期のクレスに、慣らすためのハンドリングは要りません。理由は三つあります。

一つ目は、尾です。クレスの尾は自切すると二度と生えてきません。ハンドリングの記事で、慣らす手順の最初を「最初の数日は触らない」「ケージ越しに気配に慣れさせる」としているのはこのためで、ベビー期はこの最初の段階に長くとどまると考えてください。

二つ目は、落下です。ベビーは手のひらの上でも跳びます。手の上から床までの高さは、ベビーにとってケージのどこよりも高い落下地点です。

三つ目は、急いで慣らしても得るものが少ないことです。ベビー期に尾を失えば戻りませんが、ベビー期に触らなかった分の慣れは、成体になってから取り戻せます。

ベビー期にやってよいのは、ケージ越しに気配に慣らすところまでです。餌皿の交換や霧吹きで手を入れる時に、ゆっくり動き、追わず、捕まえない。ケージの引っ越しなどでどうしても手に乗せる時は、指でつままず、手のひらから手のひらへ自分の足で移らせ、床の近くで短時間で済ませます。持ち上げ方の詳細はハンドリングの記事を参照してください。

体重と成長の見方

ベビー期の成長を確かめる道具は体重ですが、ここで数字の目安を探しに行かないでください。クレスの成長速度は個体差が大きく、「この月齢でこのグラム」という基準を当てはめると、遅い個体を病気と誤解したり、早い個体の異変を見逃したりします。

見るのは、増えているかどうかだけです。

  • 同じ道具で測る。台所用でも構いませんが、毎回同じものを使います
  • 同じ曜日に測る。給餌や脱皮の周期で体重は上下するので、間隔を揃えて比べます
  • 増えているかだけを見る。前回より増えていれば順調です。横ばいが続く、減っている、が確認の対象です

測る時は、ベビーを手で持って乗せるのではなく、小さな容器ごと乗せて容器の重さを引きます。持ち上げる回数を減らすのが、ここでも優先です。

体重が減り続けている、増えないまま食べる様子も見えない、という時は、温度・湿度・餌の位置を見直したうえで、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。

つまずきやすい場面(お迎え直後・脱皮・夏)

お迎え直後。環境が変わった直後は、食べない、隠れて出てこない、が普通です。ここでいちばん避けたいのが、心配になって覗き込み、手を入れ、レイアウトを変えることです。動かすほど落ち着くのが遅れます。やるのは、夜の霧吹きと朝の温湿度計の確認、餌皿を置くことだけにして、変化はケージの外から見ます。糞が出た、皿に舐めた跡が付いた、のどちらかが見えれば慣れ始めています。

脱皮脱皮の記事にあるとおり、クレスは脱いだ皮を食べるため脱皮に気づきにくく、頻度は幼体ほど短くなります。ベビー期は脱皮の回数が多いぶん、指先や尾の先に皮が残る機会も多いということです。見分け方と様子見の期限、やってはいけないことは脱皮の記事が持っています。ベビーで足すべきは、脱皮のたびに指先を見る習慣を、お迎えの最初から付けておくことです。

。クレスの適温は22〜26℃で、28℃を超える環境は避けます。この値もベビーで変わりませんが、小さいケージは温まるのが早く、ベビーは体が小さい分、温度の影響が出るのも早くなります。エアコンで部屋ごと管理し、直射日光の入る窓際に置かない、という基本は温度と湿度の記事のとおりで、ベビー期に加えるのは、小さいケージを床に直置きしない、家電の近くに置かない、といった置き場所の確認です。動きが鈍い、口を開けている、といった様子があれば、温度を確認して下げたうえで、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。

まとめ

  • クレスのベビーで先に効くのは、餌より落下と乾燥。レオパのベビー飼育の前提を持ち込まない
  • ベビー期は月齢や体重で切らず、「体がしっかりするまで」「餌を安定して食べるまで」の状態で見る
  • ケージは小さめから。高さより、跳ばなくても渡れる足場と、落ちても平気な作りが先
  • 湿度の波は成体と同じ。変えるのは確認の仕方で、夜の霧吹きを欠かさず、朝に温湿度計を見る
  • 食べているかは皿の減りではなく、糞・舐めた跡・体つきで見る
  • ハンドリングは後回し。尾は再生しない。ベビー期はケージ越しに気配に慣らすまで
  • 体重は同じ道具・同じ曜日で、増えているかだけを見る

ベビー期に飼い主ができることは、それほど多くありません。落ちない環境を作り、乾かさず、触らず、見る。各論はそれぞれの記事に任せて、ベビー期はこの組み合わせだけを守ってください。