アオジタトカゲは、RVC(ロイヤル獣医センターの日本語ケアシート)が「好奇心が強く丈夫」とし、人にも慣れやすいとされるトカゲです。ただ、丈夫であることと、変化に気づきやすいことは別です。昼行性で姿は見やすいのに、「今日はよく寝ている」「少し食べる量が減った」が、季節のせいなのか体調のせいなのか、見ただけでは分かりません。

この記事では、RSPCA(英国の動物保護団体)、RSPCA Australia(豪州・獣医専門医が執筆)、RVCの3つのケアシートをもとに、アオジタトカゲの体調をどこで、どの頻度で見るかを整理します。病名の解説はせず、出典が挙げている範囲のトラブルについて「こう見えたら、こう疑う」までを書き、迷う形はすべて爬虫類を診られる動物病院への相談で閉じています。飼育環境の数字はアオジタトカゲの飼い方、餌と肥満の話はアオジタトカゲの餌が持っているので、この記事では体の見方に絞ります。

アオジタは変化が見えにくいか:不調は体つきと食欲に出る

アオジタトカゲの体調は、体つきと食欲に出ます。出典が挙げる飼育下のトラブルを並べると、肥満、MBD(代謝性骨疾患)、呼吸器感染症、インパクション(腸閉塞)、寄生虫で、どれも「体の形が変わる」「食べなくなる」「糞が変わる」のいずれかに現れます。この記事では、その見える場所を順に確かめていきます。

ただし、見える場所がどこかを知らないと、見ていても気づけません。英国のRSPCAは、健康なアオジタトカゲの特徴として、尾の付け根が太いことを挙げ、ここが脂肪を蓄える場所だと説明しています。体重の増減が先に出る場所が尾の付け根だと分かっていれば、見る場所が一つ決まります。

もう一つ、アオジタトカゲは寒い時期に食べる量が減り、眠る時間が増えることがあります。英国のRSPCAはこれをブルメーションと呼び、健康な個体なら心配ないとしています。つまり「食べない」が、そのまま「病気」ではありません。季節の鈍りと、受診が要る食べなさをどう分けるかは、この記事の後半で扱います。

毎日と毎月に見る点:温度計・加熱と照明・糞・食欲、月1回の体重

英国のRSPCAは、個体の健康と行動を毎日観察するように、としています。あわせて、同じ出典が毎日・毎月の頻度を決めている項目を表にまとめます。体を見る前に、環境の機器が動いているかを見る順番になっています。

頻度 見るもの 内容 出典
毎日 温度計 バスキングゾーンとクール側の最高・最低温度を確かめる。サーモスタットは常に正確とは限らない RSPCA(英国)
毎日 加熱と照明 常に働いているかを確かめる RSPCA(英国)
毎日 糞 汚れたらすぐ取り除く。便秘・下痢がないか見る RSPCA(英国)/RSPCA Australia(糞と尿酸を毎日取り除く)
毎日 食欲と行動 健康と行動を毎日観察する RSPCA(英国)
月1回 体重 肥満を避けるために月1回測る RSPCA(英国)
月1回 ケージ全体 爬虫類に安全な消毒剤で全体を清掃する RSPCA(英国)

温度計について、英国のRSPCAは、サーモスタットは常に正確とは限らないので、デジタル温度計のプローブをクール側とバスキングゾーンの2か所に置き、毎日最高と最低の温度を確かめるように、としています。赤外線温度計で毎日2か所を測る方法も挙げられています。体調チェックの記事で温度計が先頭に来るのは、後で触れるMBDや呼吸器感染症の予防が、どれも温度と照明が「働いていること」を前提にしているためです。

糞は、英国のRSPCAによると水っぽく、黒っぽい部分(便)と白い部分(尿酸)でできています。毎日取り除く習慣があれば、便秘や下痢、色や形の変化に気づく機会が毎日あることになります。掃除や取り扱いの前後には手を洗うように、ともしています。サルモネラについては、獣医師団体のARAVが、すべての爬虫類を保菌している可能性があるものとして扱うよう求めています(爬虫類のサルモネラ対策)。

体重は月1回です。英国のRSPCAが体重測定を勧めている文脈は肥満の予防で、飼育下では高タンパクの食事と運動不足で肥満になりやすい、という説明がついています。目安となる体重の数字は、この記事では挙げません。個体差があり、基準の数字を当てはめるより、同じ個体の前回との差を見る方が確かです。測ったら日付と体重を一行で残しておくと、動物病院で「いつから」「どのくらい」を答えられます。

体つきの見方:つや・顎・尾の付け根

英国のRSPCAは、健康なアオジタトカゲの特徴を3つ挙げています。

  • 鱗が滑らかで、つやがある
  • 顎がまっすぐである
  • 尾の付け根が太い。ここに脂肪が蓄えられる

月1回の体重測定のついでに、この3か所を同じ角度から見ておくと、比べる基準が自分の中にできます。顎の形は、後で触れるMBDで変化が出る場所でもあります。尾の付け根は、痩せても太りすぎても変わる場所です。

太りすぎの側は、RVCが肥満の症状として、脂肪のたるみ、平たく広がった体、筋緊張の低下、動きの鈍さを挙げています。アオジタトカゲは体が重く地表で暮らす種で、RVCは肥満を避けるために十分な床面積、高温のバスキングゾーン、バランスのとれた雑食の食事が必要だとしています。どの食材をどの割合で与えるか、あげすぎに注意する食材は何かは、アオジタトカゲの餌の「肥満を避ける」の節で整理しています。

痩せの側は、英国のRSPCAが体重減少を内部寄生虫のサインの一つとして挙げています。体重が減っていて、尾の付け根が細くなってきた時は、食べる量だけでなく糞の状態もあわせて見て、次の節以降の見分け方に進んでください。

脱皮:むけ方と、残りやすい場所

アオジタトカゲの脱皮について、2つの出典が書いています。むけ方の表現は少し違います。

項目 RSPCA(英国) RSPCA Australia
むけ方 大きな破片でむける 複数の破片でむける
頻度 決まりはない。成長中の若い個体は頻繁 成長速度で決まる
むける前 皮がくすんで見える 記載なし
理想のむけ方 ほぼ1日ほどで楽にむける 記載なし
残りやすい場所 記載なし 指と尾の先

英国のRSPCAによると、脱皮が近づくと皮がくすんで見え、その後、ほぼ1日ほどで楽にむけるのが理想です。そうならない時は、ぬるま湯に浸すと皮が柔らかくなることがある、としています。自宅でできることとして出典が挙げているのはこの1つで、これ以外の処置は書かれていません。

うまくむけない原因は、英国のRSPCAによると低湿度であることが多いとされています。湿度はアオジタトカゲの亜種で適した範囲が変わる項目で、アオジタトカゲの飼い方の「湿度は亜種で変わる」の節に、出典ごとの数字をまとめています。脱皮がうまくいかない時は、まずその範囲に湿度計の数字が収まっているかを確かめる順番になります。

RSPCA Australiaは、残った皮に注意するように、特に指と尾の先を挙げています。胴体の皮がむけたあとに、指先や尾の先だけ皮が残っていないかを見ます。毎日の観察で見る場所の一つに加えておいてください。英国のRSPCAは、脱皮の問題が繰り返し起きるなら獣医に相談するように、としています。

よくあるトラブルと見分け方

出典が挙げているトラブルを、見える様子と、環境側で疑う点にまとめます。どれも「こう見えたら、こう疑う」という段階までで、外から見た様子で原因を確定する方法はありません。当てはまるものがあれば、自分で処置しようとせず、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。

トラブル 見える様子 環境側で疑う点 出典
MBD(代謝性骨疾患) 背骨の波打ち・沈み、次に顎の形の変化(英国)/柔らかい・腫れた顎、湾曲した四肢、震え、衰弱、歩行困難(RVC) UVBの不足・期限切れ、バスキング温度、カルシウム RSPCA(英国)/RVC
呼吸器感染症 開口呼吸、ゼーゼー・カチカチという音、粘液や泡、元気消失 温度の低下、亜種に合わない湿度、冷えてじめじめした環境、換気不足 RVC
インパクション(腸閉塞) いきみ、排便がない、膨満、食欲不振、衰弱 飲み込みやすい床材、バスキング温度、餌の大きさ、水分 RVC/RSPCA(英国)
内部寄生虫 便秘、下痢、体重減少 (新しい糞で検査) RSPCA(英国)
皮膚の病気・ダニ 水に長く浸かっている RSPCA(英国)

MBD:背骨と顎に出る

英国のRSPCAは、飼育下の爬虫類でもっとも多い問題の一つとしてMBDを挙げています。多くはUVBの不足でビタミンD3が足りなくなり、餌からカルシウムを吸収できなくなることで起き、筋力の低下と骨が柔らかくなることにつながる、という説明です。アオジタトカゲは栄養不足のサインが比較的早く出るとされ、まず背骨の波打ちや沈み、次に顎の形の変化が挙げられています。RVCは症状として、柔らかい、または腫れた顎、湾曲した四肢、震え、衰弱、歩行困難を挙げています。

予防としてRVCが挙げるのは、適切なUVBを期限どおりに交換して用意すること、高温のバスキングゾーン、バランスのよい青菜とともにカルシウムを補給することです。UVBの交換時期は出典で割れていて、RVCは6〜12か月ごと、英国のRSPCAは製造元の指示に従うとしています。英国のRSPCAは、UVIメーターを生体の高さに置いてランプに向け、出力を定期的に測ることも挙げています。

呼吸器感染症:口を開けて呼吸する

RVCは、開口呼吸、ゼーゼーやカチカチという音、粘液や泡、元気消失を症状として挙げています。予防は、温度を適切に保ち、湿度を亜種に合わせ、冷えてじめじめした環境を避け、換気を確保することです。英国のRSPCAも、ケージの換気は細菌の繁殖と感染を減らすために欠かせない、としています。

インパクション:いきんでも出ない

RVCは、いきみ、排便がない、膨満、食欲不振、衰弱を症状として挙げています。予防は、消化に十分な温度をバスキングゾーンで保つこと、適正サイズの餌、飲み込みやすい粒状の床材を避けること、水分補給です。英国のRSPCAは具体的に、カルシサンド、ブナのチップ、コーンコブ、クルミ殻を、消化管に詰まる危険がある床材として挙げています。床材の選び方はアオジタトカゲの飼い方の床材の節にまとめています。

内部寄生虫:糞と体重に出る

英国のRSPCAは、便秘や下痢といった糞の異常、体重減少を、内部寄生虫によることがあるサインとして挙げています。気になる時は、新しい糞を持って動物病院で寄生虫の検査をしてもらうように、としています。毎日糞を取り除く習慣は、ここでも効いてきます。

水に長く浸かっている

英国のRSPCAは、長い時間水の中に座っているなら、皮膚の病気かダニの可能性がある、としています。水に入る頻度や時間が普段より明らかに増えている時は、出典の言う「長い時間」に当たらないか確かめ、当たるなら相談の対象です。

冬に食べない:ブルメーションと、受診が要る食べなさ

英国のRSPCAによると、アオジタトカゲが寒い時期に動きが鈍くなるのはよくあることで、これをブルメーションと呼びます。引き金は室温と日照時間の減少で、食べる量が減り、眠る時間が増えます。健康な個体であれば、ブルメーションそのものは心配ないとされています。

ただし同じ出典は、2つの場合に獣医に相談するように、としています。

  • 急に食べなくなった。長い時間をかけて徐々に減るのではなく、突然止まった場合
  • 体重がかなり減っている場合

つまり分けるのは、季節に合わせて「徐々に減る」のか、季節と関係なく「急に止まる」のかです。月1回の体重測定がここで効きます。食べる量が減っても体重が保たれていれば季節の鈍りとして見られますが、体重が落ちていれば相談の対象です。

食べない期間の数字は、RVCが「1〜2週間以上餌を拒み、元気がない」をすぐに動物病院へ行く目安の一つとして挙げています。この記事で挙げる数字はこれだけで、「何日食べなければ危険」という独自の線は引きません。冬に鈍っている時と、元気がなく体重も減っている時を、同じ「食べない」として扱わないでください。

受診の目安:様子を見てよい/すぐ相談する

RVCは「こんなときはすぐに動物病院へ」として5つを挙げています。英国のRSPCAが挙げる相談の目安とあわせて、表にします。「相談するかどうか」を決めるための線で、診断の代わりにはなりません。迷ったら早めに相談する側に倒してください。

見えている状態 目安 出典
寒い時期に食べる量が徐々に減り、眠る時間が増えたが、体重は保たれている 温度と照明が働いているかを確かめながら様子を見る RSPCA(英国)
脱皮前に皮がくすんでいる 様子を見る。ほぼ1日ほどでむけるか見る RSPCA(英国)
指や尾の先に皮が残っている 湿度を確かめる。繰り返すなら相談する RSPCA Australia/RSPCA(英国)
急に食べなくなった、体重がかなり減った 相談する RSPCA(英国)
便秘・下痢・体重減少が続く 新しい糞を持って相談する(寄生虫検査) RSPCA(英国)
水に長く浸かっている 相談する(皮膚の病気・ダニの可能性) RSPCA(英国)
粘液やゼーゼーという音を伴う開口呼吸 すぐ相談する RVC
柔らかい、または腫れた顎と、曲がりやすい四肢 すぐ相談する RVC
いきんでも排便がなく、お腹が張っている すぐ相談する RVC
1〜2週間以上餌を拒み、元気がない すぐ相談する RVC
著しい肥満で、動いたり呼吸したりするのが困難 すぐ相談する RVC

注意

「様子を見る」には、次に確かめる日がついています。翌日の温度計、次の月の体重で、悪くなっていないかを確かめるところまでが「様子を見る」です。英国のRSPCAは、上に挙げたような心配があればすぐに獣医に診てもらうように、としています。

不調に見えた時、先に疑うのは環境

ここまでの表で「環境側で疑う点」に挙がったものは、温度、UVBの期限、湿度、床材の4つに集まります。英国のRSPCAも、病気の節の冒頭で、食事に偏りがないこと、加熱と照明が常に働いていることを確かめるように、と書いています。相談と並行して見直す順番を挙げます。

  • 温度。温度計の数字が、バスキングゾーンとクール側の両方で目安の範囲にあるか。サーモスタットの設定ではなく、温度計の実測で見ます
  • UVBの期限。設置してから何か月経ったか。RVCは6〜12か月、英国のRSPCAは製造元の指示どおりとしていて、どちらの目安を使っているかを確かめます。UVIメーターがあれば、生体の高さで出力を測ります
  • 湿度。飼っている亜種に合った範囲に、クール側の湿度計の数字が収まっているか。脱皮の不調と呼吸器の不調は、どちらも湿度のずれが疑う点に挙がっています
  • 床材。飲み込みやすい粒状の床材を使っていないか

バスキング温度やUVBの数字は出典で割れているので、どの出典の数字を目安にしているかによって「範囲内」の意味が変わります。それぞれの数字はアオジタトカゲの飼い方に出典ごとに並べてあります。環境を見直して数字が目安に戻り、それでも体つきや食欲の変化が続くなら、環境ではなく体の問題として相談してください。

病院は元気なうちに探しておく

英国のRSPCAは、健康な個体の特徴を挙げたすぐ後に、爬虫類を診る獣医に登録しておくように、としています。健康診断や、必要になった時の治療を受けられるようにしておくためです。この記事で挙げたトラブルは、どれも「すぐ相談する」側に入るものを含んでいます。その時に病院を探し始めるのでは遅いので、迎える前か、迎えてすぐの元気なうちに候補を決めておきます。

相談する時に持っていくと話が早いのは、月1回の体重の記録、体つきの写真、温度計と湿度計の実測値、UVBを設置した日、最後に糞が出た日です。糞の異常や体重減少で相談する場合は、英国のRSPCAが挙げているとおり、新しい糞を持っていくと寄生虫の検査ができます。

まとめ

  • アオジタトカゲの不調は、体つきと食欲に出ます。健康な体の目安は、英国のRSPCAによると鱗のつや・まっすぐな顎・太い尾の付け根です
  • 毎日見るのは温度計の最高と最低、加熱と照明、糞、食欲と行動。月1回は体重とケージ全体の清掃です
  • 脱皮は大きな破片でむけ、指と尾の先に残りやすい。うまくむけない原因は低湿度が多く、繰り返すなら相談します
  • 出典が挙げるトラブルは肥満・MBD・呼吸器感染症・インパクション・寄生虫で、見分けは背骨と顎、呼吸の音、排便、糞と体重で行います
  • 冬に徐々に食べる量が減るのは季節の鈍りとして見られますが、急に止まった、体重がかなり減った、1〜2週間以上食べず元気がないは相談の対象です
  • 不調に見えたら、先に温度・UVBの期限・湿度・床材を疑います。UVBの交換時期は出典で割れています(RVC 6〜12か月/英国は製造元の指示)
  • 病院は元気なうちに探しておきます

処置や治療の判断は、爬虫類を診られる動物病院に任せてください。この記事が扱ったのは、相談するかどうかを決めるために、どこを、どの頻度で見るかまでです。