アオジタトカゲを飼っていて最初の冬を迎えると、食べる量が減り、シェルターから出てこない日が増えることがあります。英国のRSPCA(動物保護団体)はこれをブルメーションと呼び、寒い時期にはよく起きることだとしています。一方で、飼育情報のサイトには「秋の終わりに加温を止めて、数か月眠らせる」という手順が載っていることがあります。同じブルメーションという言葉でも、前者は飼育環境の中で自然に起きる変化の観察で、後者は人が意図して冷やす手順です。この2つを分けずに読むと、「うちの子も眠らせないといけないのか」「食べないのは放っておいていいのか」という2つの不安が、同時に残ります。

この記事では、英国のRSPCA、The Unusual Pet Vets(豪州の爬虫類を診る動物病院。以下UPV)、RVC(ロイヤル獣医センターの日本語ケアシート)の3つの獣医系の出典と、飼育情報サイトのReptiFilesをもとに、「眠らせるのか、眠らせないのか。眠らせるなら、前に何を確かめ、眠っている間に何を見るか」を整理します。ReptiFilesについては、獣医のサイトではなく著者も獣医ではないと自ら明記しているサイトなので、そこにしか書かれていない内容はそのつど区別して書きます。

食べない時に病気かどうかを見分ける方法はアオジタトカゲの体調チェックが、ふだんの温度や照明の数字はアオジタトカゲの飼い方とアオジタトカゲのケージレイアウトが持っています。この記事は冬の過ごし方に絞ります。

冬に鈍るのは自然に起きる。眠らせるのは別の話

英国のRSPCAのケアシートには、ブルメーションの節があります。内容は短く、要点は4つです。

  • 英国の厳しい寒い時期に、アオジタトカゲの動きが鈍くなるのはよくあることで、これをブルメーションと呼ぶ
  • 引き金は、室温と自然の日照時間の低下
  • 食べる量が減り、眠る時間が増える
  • 健康な個体であれば心配はない。ただし、長い時間をかけて徐々にではなく急に食べなくなった時、体重がかなり減っている時は、爬虫類を診る獣医に相談する

ここで書かれているのは、飼い主が何かをする手順ではなく、「こういうことが起きる」「こうなったら相談する」という観察の話です。同じケアシートの温度の節は、夜間の温度は20〜22℃までしか下げないように、としていて、加温を止める手順はどこにも書かれていません。英国のRSPCAが書いているのは、飼い主の手順ではなく、観察と相談の条件です。

対して、人が加温を止め、照明を短くして、数か月眠らせる手順は、この記事で参照する3つの獣医系出典のどこにも載っていません。載っているのはReptiFilesだけです。この違いが、この記事の軸になります。

季節の鈍りと、人が冷やして眠らせる手順は別物

2つの「ブルメーション」を、出典ごとに並べます。

項目 英国のRSPCA ReptiFiles
出典の性格 動物保護団体のケアシート 飼育情報サイト。獣医のサイトではなく著者も獣医ではないと明記
何が起きるか 室温と日照の低下で、食べる量が減り眠る時間が増える 温帯産の種はふつう冬眠し、熱帯産の種はふつう冬眠しない、と区別する
飼い主がすること 手順の記載なし。健康なら心配なし。急に食べなくなる・体重がかなり減るなら獣医へ 給餌を止め、加温を切り、照明を短くして、4〜6か月眠らせる手順を載せている
温度 夜間でも20〜22℃まで(温度の節) 加温をすべて止めてよい。ただし13℃を下回らせない

英国のRSPCAの書き方では、飼い主が冬に向けて環境を変える場面はありません。鈍りは起きるものとして受け止め、観察の頻度と、相談する条件だけが示されています。ReptiFilesの書き方では、飼い主が能動的に温度と照明を変えて、眠る条件を作ります。

どちらが正しいか、という話ではありません。出典の性格が違い、書いている対象も違います。ただ、読む側としては「冬に鈍った」という同じ見え方に対して、片方は「そのまま見守る」、もう片方は「冷やして眠らせる」と、する行動が反対に近いことを知っておく必要があります。この記事では、どちらを選ぶようにとは書きません。代わりに、眠らせる場合に獣医系の出典が置いている条件と、ReptiFilesの手順を、出どころが分かる形で並べます。

亜種による冬眠の要否は、獣医系の3出典には記載がありません。ReptiFilesの「温帯産はする、熱帯産はしない」という区別は、このサイト1つの記述として扱ってください。飼っている個体の産地と亜種を確かめることは、湿度の設定のためにアオジタトカゲの飼い方でも触れています。

眠らせてはいけない個体:12か月未満と基礎疾患

眠らせるかどうかを考える前に、獣医系の出典が「この個体は眠らせない」としている条件があります。

UPVは、ブルメーションについて次の2点を書いています。

  • 生後12か月未満の若い個体、または基礎疾患のある個体は、この状態に入らせないようにする
  • 毎回のブルメーションの前に、爬虫類獣医による身体検査を受けることを推奨する

ReptiFilesも「多くの情報源は、1歳未満の爬虫類は冬眠させないようにとしている」と書き、あわせて「生後7か月ほどの若い個体が冬眠しようとすることがある」としています。1歳未満は眠らせない、という点は、獣医クリニックの記述と飼育サイトの記述が一致しています。

ここで注意したいのは、「基礎疾患がない」ことを飼い主が自分で判断するのは難しい、という点です。UPVは別の節で、爬虫類は病気を隠すのがとても上手で、初期の症状はしばしばごく微妙だとして、6〜12か月ごとの健診を勧めています。見た目に元気で食べていることと、基礎疾患がないことは同じではありません。だからこそ、同じ出典が「毎回の前に身体検査を」としている、と読めます。

1歳未満の個体が秋に食べなくなり、動かなくなった場合、この出典の書き方では、それは「眠らせない」側の個体です。環境の温度と照明がふだんどおり保たれているかを確かめ、それでも食べないなら、季節のせいと決めずにアオジタトカゲの体調チェックの冬の節と、この記事の後半の「先に疑うのは季節か病気か」に進んでください。

眠らせる前に:身体検査と寄生虫の検査

眠らせる場合に、前にすることとして出典が挙げているのは、動物病院での検査です。

出典 眠らせる前にすること
UPV(獣医クリニック) 毎回のブルメーションの前に、爬虫類獣医による身体検査
ReptiFiles(非獣医) 経験のある爬虫類獣医による一般的な診察と、寄生虫の検査

身体検査については、獣医クリニックと飼育サイトの両方が挙げています。寄生虫の検査を名指ししているのはReptiFilesですが、英国のRSPCAも病気の節で、体重減少や糞の異常が内部寄生虫によることがあるとして、新しい糞で寄生虫の検査をしてもらうように、と書いています。

検査を前に置く理由は、前の節とつながります。眠っている間は食べず、動かず、観察できる材料が減ります。英国のRSPCAが相談の目安にしている「急に食べなくなる」「体重がかなり減る」は、眠りに入ってからでは、季節のせいか病気のせいか切り分けにくくなります。眠りに入る前に、基礎疾患がないことと、寄生虫がいないことを、飼い主の目ではなく動物病院で確かめておく、という順番です。

英国のRSPCAは、健康な個体の特徴を挙げたすぐ後に、爬虫類を診る獣医に登録しておくように、としています。秋になってから病院を探すのではなく、眠らせるかどうかを考える前に、相談できる動物病院を決めておく方が、ここまでの流れに沿います。

一つの飼育サイトの手順(非獣医・獣医系出典に記載なし)

ここからは、ReptiFilesが載せている手順を表にします。先に断っておくと、ReptiFilesは「獣医のサイトではなく、著者のMariah Healey氏も獣医ではない」と自分のサイトに明記しています。そして、この表の数字は、UPV、英国のRSPCA、RVCのいずれにも書かれていません。「一つの飼育サイトが、このように書いている」という以上の意味を持たせないでください。この通りにすれば安全だ、という読み方はできません。

項目 ReptiFilesの記述 獣医系3出典(UPV・RSPCA・RVC)での記載
対象 温帯産の種。熱帯産の種はふつう冬眠しない なし
時期 秋の終わりに始まり、冬の終わりから早春まで続く なし
期間 温帯産の種では、4〜6か月ほど なし
給餌の停止 加温を切る約2週間前に給餌を止める。消化管の中で食べ物が腐るのを避けるため なし
照明 絶食して1週間たったら、照明を1日6時間だけにする。熱を出さない照明(UVB・LED)は点けておく なし
加温 すべて止めてよい。室温でだいたい足りる なし(英国のRSPCAは夜間でも20〜22℃まで)
温度の下限 13℃を下回らせない なし
眠っている間の給餌 与えない なし

表の右の列が「なし」で揃うのは、獣医系の3出典がこの手順を否定しているという意味ではありません。書いていない、という意味です。書いていないことを、安全だとも危険だとも読めない、というのが正確なところです。

加温の行だけは、英国のRSPCAの温度の節とぶつかります。英国のRSPCAは夜間でも20〜22℃までとし、室温がそれより下がるならサーモスタット付きのセラミックヒーターを使う形を挙げています。ReptiFilesは加温を止めて13℃を下回らなければよい、としています。同じ生き物の冬の温度について、7℃の開きがある2つの記述が存在します。この開きを埋める材料は、この記事で参照した出典の中にはありません。どちらの温度で冬を過ごさせるかは、前の節で触れた身体検査の際に、その個体を診た動物病院に相談する事項として残しておきます。

眠っている間に見るもの:体重・水・触らない

眠っている間に飼い主が見るものについても、書いているのはReptiFilesです。獣医系の出典は、眠っている間の手順を書いていません。この節もReptiFilesの記述として読んでください。

項目 ReptiFilesの記述
体重 2週間に1回、キッチンスケールで測る
体重の線 爬虫類は冬眠中に体重が減らないはず。開始時の体重から10%以上減ったら獣医に連絡する
水 水入れの水を週1回替える
起こすこと 起こそうとすると、かえって冬眠が長引く可能性が高い
餌 冬眠中は餌を与えない

獣医系の出典と重なる部分を挙げておきます。体重を測ることは、英国のRSPCAが月1回の体重測定を勧めています(文脈は肥満の予防です)。体重がかなり減っている時に相談する、という点も英国のRSPCAにあります。ただし「2週間に1回」「10%」という頻度と線は、ReptiFilesのものです。英国のRSPCAは「かなり減る」としか書いておらず、数字を置いていません。

体重の記録は、眠らせる場合に、飼い主の手元に残るほとんど唯一の客観的な材料になります。眠りに入る前の体重を日付とともに控えておかないと、「10%」も「かなり」も比べる基準がありません。前の節の身体検査の日に測った体重を開始時の数字にしておくと、動物病院と同じ数字を共有できます。

水について、英国のRSPCAはふだんの飼育で毎日替えるように、としています。ReptiFilesの「週1回」は、ふだんより頻度を落とした数字ですが、その根拠は獣医系の出典にはありません。

触らないことについて、ReptiFilesは「起こそうとしても、冬眠が長引くだけになる可能性が高い」と書いています。心配になって持ち上げたり、バスキングライトを点けて起こそうとしたりすることが、望む結果につながらない、という趣旨です。ただしこれは、眠らせると決めて、前に検査を済ませた個体についての話です。検査をしていない個体や、1歳未満の個体が動かなくなった場合は、「触らずに見守る」ではなく、前の節と次の節のとおり、相談する側に倒してください。

起きてから:加温と給餌の再開、戻らない時の相談

起こし方と、起きてからの給餌についても、記述があるのはReptiFilesだけです。獣医系の3出典には、起こす手順も、起きた後に食べない時の線も書かれていません。

ReptiFilesが温帯産の種について書いている順番は次のとおりです。

  1. 照明の時間を戻す(出典は、1日12時間にする、と書いています)
  2. その後、バスキングスポットの加温を戻す
  3. 加温が戻ってから1週間後に、餌を出す

戻らない時の線として、同じ出典は2つを挙げています。

  • 加温を戻して1週間たっても起きてこない場合は、獣医へ
  • 起きてから1か月たっても食べない場合は、獣医へ

この「1週間」「1か月」も、ReptiFilesの数字です。獣医系の出典で食べない期間について数字を置いているのは、RVCの「1〜2週間以上餌を拒み、元気がない」で、これはすぐに動物病院へ行く目安として書かれています。RVCの数字は冬眠明けに限った話ではなく、ふだんの飼育全体についての目安です。冬眠明けで加温も戻しているのに食べず、元気もない、という場合は、ReptiFilesの「1か月」を待つ前に、RVCの「1〜2週間」の方が先に来ます。どちらの数字で動くか迷う状況であれば、早い方の数字で相談する側に倒してください。

起きてからの環境は、ふだんの飼育環境に戻します。温度と照明の数字は出典で割れているので、アオジタトカゲの飼い方の温度とUVBの節で、どの出典の数字を目安にしているかを確かめ直してください。熱源の置き方とシェルターの位置はアオジタトカゲのケージレイアウトにまとめています。餌の再開は、アオジタトカゲの餌の与え方と頻度の節が、出典ごとの頻度を並べています。

食べない・鈍いとき、先に疑うのは季節か病気か

ここまでは「眠らせると決めた場合」の話でした。実際には、眠らせるつもりがないのに冬に食べなくなった、という場面の方が多いはずです。その時に、季節の鈍りとして見守ってよいのか、病気を疑うのかを分ける線を、獣医系の出典から並べます。

見えている状態 目安 出典
寒い時期に、食べる量が徐々に減り、眠る時間が増えた。体重は保たれている 健康な個体なら心配ない。加温と照明が働いているかを確かめながら見守る 英国のRSPCA
徐々にではなく、急に食べなくなった 爬虫類を診る獣医に相談する 英国のRSPCA
体重がかなり減っている 爬虫類を診る獣医に相談する 英国のRSPCA
1〜2週間以上餌を拒み、元気がない すぐに動物病院へ RVC
生後12か月未満、または基礎疾患がある個体が鈍っている そもそも眠らせない側の個体。相談する UPV

分ける線は、大きく3つです。

1つ目は、減り方です。英国のRSPCAは、「長い時間をかけて」減るのと「急に」止まるのを分けています。季節の鈍りは、日照と室温の変化に合わせて徐々に進みます。昨日まで普通に食べていた個体が今日から口にしない、という変化は、同じ出典の書き方では季節の側ではありません。

2つ目は、体重です。食べる量が減っても体重が保たれていれば、英国のRSPCAの書き方では心配のない範囲に入ります。体重が落ちていれば相談の対象です。ここで、月1回の体重測定の記録があるかどうかで、答えられることが変わります。

3つ目は、元気の有無です。RVCの「1〜2週間以上餌を拒み、元気がない」は、食べないことと元気がないことの両方が揃った時の目安です。寒い時期に眠る時間が増えること自体は英国のRSPCAが自然な変化としている一方、起きている時にも力がない、という様子は別の話です。この数字はアオジタトカゲの体調チェックの冬の節と同じもので、この記事でも独自の日数は置きません。

もう1つ、どの出典よりも先に確かめることがあります。英国のRSPCAは、ブルメーションの引き金を室温と日照の低下としています。出典はヒーターの不調に触れていませんが、同じ出典は、サーモスタットは常に正確とは限らないので、クール側とバスキングゾーンの温度計で毎日最高と最低を確かめるように、としています。冬に鈍りが見えた時、季節か病気かを考える前に、温度計の数字がふだんの範囲にあるかを見てください。温度計の数字がふだんの範囲を外れていれば、季節や病気を考える前に、機器と置き場所を見直す必要があります。

まとめ

  • 英国のRSPCAが書くブルメーションは、室温と日照の低下で、食べる量が減り眠る時間が増えるという、飼育環境の中で自然に起きる変化です。健康な個体なら心配ないとされ、飼い主がする手順は書かれていません
  • 加温を止め、照明を短くして数か月眠らせる手順は、獣医系の3出典(UPV・英国のRSPCA・RVC)には載っていません。載っているのは、獣医のサイトではなく著者も獣医ではないと明記しているReptiFilesです
  • UPVは、生後12か月未満と基礎疾患のある個体はこの状態に入らせないとし、毎回の前に爬虫類獣医の身体検査を推奨しています。ReptiFilesも1歳未満は眠らせないとする情報源が多いとしています
  • ReptiFilesの手順(4〜6か月、給餌停止2週間、13℃を下回らせない、照明6時間、2週間ごとの体重、10%減で獣医、水は週1回、1週間で起きなければ獣医、1か月食べなければ獣医)は、一つの飼育サイトの記述として表に出典つきで並べました。この通りにすれば安全、という意味ではありません
  • 冬の温度は、英国のRSPCAが夜間でも20〜22℃まで、ReptiFilesが13℃を下回らなければ加温なしでよい、と開きがあります。この開きを埋める材料は出典にありません
  • 眠らせるつもりがないのに食べない時は、徐々にか急にか、体重が保たれているか、元気があるかで分けます。急に止まった、体重がかなり減った(英国のRSPCA)、1〜2週間以上食べず元気がない(RVC)は相談の対象です
  • どの場合も、先に温度計の数字を見ます。英国のRSPCAは、サーモスタットは常に正確とは限らないとして、最高と最低を毎日確かめるよう書いています

眠らせるかどうか、眠らせるならどの温度で、起きてから食べない時にいつ動くか。この記事では、出典に書かれている範囲を出どころつきで並べるところまでにしました。その先の判断は、飼っている個体を実際に診た上でしか答えが出ません。眠らせる前の身体検査も、冬に食べない時の相談も、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。