アオジタトカゲは、爬虫類の中では触れ合える側に入るトカゲです。RVC(ロイヤル獣医センターの日本語ケアシート)は「比較的よく触れ合えるトカゲの一つ」とし、豪州の爬虫類診療クリニックであるThe Unusual Pet Vetsは、丁寧に扱えば慣れやすいとしています。ただ、どの出典も「慣れる」には条件をつけていて、持ち方にも共通の指示があります。

この記事では、RSPCA(英国の動物保護団体)、RSPCA Australia(豪州・獣医専門医が執筆)、RVC、The Unusual Pet Vetsの4つをもとに、実際にどう持ち、どこに気をつけるかを整理します。手で慣らす日数や回数は、どの出典にも書かれていないので挙げません。性格や単独飼育の話はアオジタトカゲの飼い方が持っているので、ここでは手順と、やってはいけないことに絞ります。

アオジタは触れ合える方だが、「慣れる」には条件がある

人に慣れるかどうかについて、4つの出典はおおむね同じ方向を向いています。

出典 慣れについて 条件
RSPCA(英国) 人との触れ合いやハンドリングに耐えられる 環境に慣れた後。慣れるまで時間が要る
RVC 多くはとてもよく人に慣れ、落ち着いて体を支えるハンドリングによく耐える 常に体を支え、つかまない
The Unusual Pet Vets おとなしく扱いに耐える。丁寧に扱えば慣れやすい 体の中央を支える
RSPCA Australia 他の動物への攻撃性はとても低く、おとなしく臆病とされる (ハンドリングの記載なし)

一方で、咬むかどうかは出典で温度差があります。英国のRSPCAは「咬む力はかなり強い」と書き、The Unusual Pet Vetsは「咬むことは珍しい」としたうえで、咬まれると強い顎でかなり痛い、と続けています。RSPCA Australiaは攻撃性の低さを強調しています。どれが正しいと決めるより、咬みにくいことと、咬まれた時の力が強いことは別の事実だと読んで、両方を前提に手順を組み立てます。

なお、人に慣れることと、同じ種どうしで同居できることは別です。単独飼育の理由はアオジタトカゲの飼い方の「触れ合いと、単独飼育」の節にあります。

触る前に整えること:環境に慣れてから・最初の週は触らない・手を洗う

英国のRSPCAが「ハンドリングに耐えられる」と書いている前提は、環境に慣れた後である、という点です。同じ出典は、迎えた最初の1週間はハンドリングを控え、自分のペースで探索させるように、としています。立ち上げの手順は、ケージの試運転とあわせてアオジタトカゲのケージレイアウトの「置き場所と立ち上げ前の試運転」の節にあるので、ここでは繰り返しません。

もう一つ、触る側の準備があります。英国のRSPCAは、掃除や取り扱いの前後に手を洗うように、としています。出典の書き方は「前後」の両方です。サルモネラについては、獣医師団体のARAVが、すべての爬虫類を保菌している可能性があるものとして扱うよう求めているので、触る個体を選ばずに洗います(爬虫類のサルモネラ対策)。

持ち方:すくい上げて、4本の脚と体の中央を支える

持ち方について、3つの出典が書いている内容は一致しています。英国のRSPCAは、決して掴まないこと(ストレスになる)、両手でそっとすくい上げ、4本の脚がすべて支えられている状態にすることを挙げています。The Unusual Pet Vetsは、体の中央を支えることでストレスを減らし、落としたり怪我をさせたりする危険を減らす、としています。RVCも、常に体を支え、つかむことは避ける、と書いています。

やること やらないこと(やることの裏返し) 出典
両手でそっとすくい上げる 上から掴む RSPCA(英国)
4本の脚をすべて支える 脚を宙に浮かせたまま持つ RSPCA(英国)
体の中央(胴)を支える 体の一部だけで吊る The Unusual Pet Vets
持っている間も体を支え続ける 途中で支えを外す RVC

共通するのは「支える」と「掴まない」の2つです。出典が示しているのは、掴まずに両手で下から支え、4本の脚すべてと体の中央を支える形です。出典に、これ以上細かい手の位置の指示はありません。

見送るサイン:後ずさり・口を開けて舌を見せる

触ってよい日かどうかを決めるのは、飼い主ではなく個体の方です。英国のRSPCAは、手を近づけた時に後ずさりする、または口を開けて舌を見せるなら、別の機会にする方がよい、としています。

  • 後ずさりする。手から離れようとする動きで、まだ触られたくない合図です
  • 口を開けて舌を見せる。RVCによると、脅かされた時に体を膨らませ、音を立て、青い舌を突き出すのは、相手をひるませるための威嚇です。「今は触るな」の合図と読めます

見送った日は、無理に触らずに終わらせます。「慣れるまで時間が要る」と英国のRSPCAが書いているとおり、見送る回数が多いこと自体は失敗ではありません。見送るサインが出ているのに持ち上げることが、どう影響するかは出典に書かれていないので断定しません。

咬みと尾:指を餌と間違える/尾は掴まない

咬み:指を餌と間違える

The Unusual Pet Vetsは、アオジタトカゲが咬むことは珍しいとしたうえで、人の指を餌と間違えることがある、と書いています。餌の中身や与え方はアオジタトカゲの餌にまとめています。

咬まれた時の力については、英国のRSPCAが「かなり強い」、The Unusual Pet Vetsが「強い顎でかなり痛い」と、2つの出典が同じことを書いています。指を餌と間違えるという説明からは、指先を口元に近づけないことが予防になると考えられます(出典がそう書いているわけではありません)。咬まれた後の処置は出典に記載がないので、この記事では書きません。傷が気になる場合は医師に相談してください。

尾:掴まない

The Unusual Pet Vetsは、尾を掴んで持つことを決してしないように、としています。多くのスキンクは尾の自切(オートトミー)で尾を自分から切り離すことができ、再生はするものの、大きなエネルギーを使い、元の尾と同じにはならない、という説明です。RSPCA Australiaも、捕食者の気をそらすために尾を落とすことがあり、再生した尾は変形した軟骨質の突起になる、と書いています。

尾を掴むことは、持ち方の間違いにとどまらず、戻らない変化を起こす可能性があります。逃げようとする個体を尾で引き止めるのは、いちばん避けたい形です。手から離れそうな時は、尾ではなく胴の下にもう一度手を入れ直すか、その日は見送ってください。尾の付け根は体調を見る場所でもあり、尾や爪、体つきを定期的に見る方法はアオジタトカゲの体調チェックで扱っています。

注意

尾が切れた場合や、咬まれて傷が深いと感じる場合、その後の対応は出典に書かれていません。個体については爬虫類を診られる動物病院に、人の傷については医療機関に相談してください。

ケージの外に出す:10〜15分、爪、衣服、屋外は見張る

ケージの外に出す時間について、英国のRSPCAは、体温が下がるほど長く出さないように、としています。目安は10〜15分程度で、ケージの外の温度によって変わる、という書き方です。周囲の温度で体温を調節する生き物なので、ケージの外に長く置くことは、暖かい場所から離すことと同じです。この記事で挙げる時間の数字はこれだけで、「1日に何回」という頻度は出典に無いので書きません。

英国のRSPCAはもう一つ、爪がかなり鋭いので、カーペットや衣服に引っかからないよう注意するように、としています。出典が挙げているのは、引っかからないよう注意する、というところまでです。

屋外に出す場合について、The Unusual Pet Vetsは、見張りを離れないようにと書いています。理由は3つ挙げられています。

  • 素早く逃げる
  • 鳥に捕まえられる
  • 口に入れてはいけないものを食べる

屋外では、10〜15分の目安に加えてこの3つが重なります。手も目も離さない前提で、短く終えてください。

爪の伸びすぎを環境で防ぐ

The Unusual Pet Vetsは、爪の伸びすぎを診療でよく見る問題として挙げ、ケージの一部にスレートタイルのような粗い面を置くと、伸びすぎを防ぐ助けになる、としています。英国のRSPCAが挙げる「衣服やカーペットに引っかかる」場面も、爪が伸びているほど起きやすくなります。

爪を切る方法や頻度は、どの出典にも書かれていないので扱いません。出典にあるのは、伸びすぎを環境側で防ぐ方法です。粗い面をどこに置くかは、石や床材の構成とあわせてアオジタトカゲのケージレイアウトで整理しています。伸びすぎていると感じたら、自分で切る前に、爬虫類を診られる動物病院に相談してください。

まとめ(触れる前・触れている間・戻す時のチェック)

出典が書いていることを、触る流れに沿って並べ直します。

触れる前

  • 迎えてから1週間は触らない。環境に慣れた後が前提(RSPCA 英国)
  • 手を洗う(RSPCA 英国)
  • 後ずさり、口を開けて舌を見せる、が出ていたら別の日にする(RSPCA 英国)

触れている間

  • 掴まない。両手でそっとすくい、4本の脚をすべて支える(RSPCA 英国)
  • 体の中央を支え、落とさない(The Unusual Pet Vets)。持っている間も支え続ける(RVC)
  • 尾は掴まない(The Unusual Pet Vets)。自切した尾は元と同じには戻らない(RSPCA Australia)
  • 指先を口元に近づけない。咬むことは珍しいが、咬まれると強い(The Unusual Pet Vets/RSPCA 英国)
  • 爪が衣服やカーペットに引っかからないようにする(RSPCA 英国)

戻す時

  • ケージの外は10〜15分程度を目安に、体温が下がる前に戻す(RSPCA 英国)
  • 屋外に出したなら、目を離さず短く終える(The Unusual Pet Vets)
  • 戻したあとに、もう一度手を洗う(RSPCA 英国)

慣れるまでの日数や、1日に触ってよい回数は、この記事の出典には書かれていません。見送るサインが出ない日が増えることを目安に、個体のペースに合わせてください。尾が切れた、咬まれた、爪が伸びすぎている、といった場面の判断は、個体のことは爬虫類を診られる動物病院に、人の傷のことは医療機関に相談してください。